「風邪を医学的な正式名称では『上気道感染症』といいます。主に風邪のウイルスが体内に入り込み、増殖することで、喉の痛みや、寒気、熱、くしゃみなどの症状が現れます。原因となるウイルスは200種以上ともいわれ、残念ながら特効薬はありません。しかも抗生物質はウイルスには効かないので、結局のところ、寝て治すのがいちばんといえます」
こう語るのは、池袋大谷クリニック院長・大谷義夫先生。空気が乾燥して寒さが厳しくなる冬は、ウイルスの活動が活発になる。冬の病気で、真っ先に思い浮かべるのが風邪だが、冬の風邪と夏の風邪では違いがあるという。では、冬の風邪にはどんな特徴があるのか?大谷先生に聞いた。
「冬の風邪の原因となるウイルスは、一般的に低温で乾燥した環境を好みます。その典型がコロナウイルスやRSウイルス、ライノウイルスなどです。なお、大人の風邪の原因の10〜15%を占めるのがコロナウイルスです。急性中耳炎やぜんそくを悪化させたり、幼児や免疫力の弱い人に気管支炎や肺炎を起こさせたり、ときには胃腸炎を起こすこともあります」(大谷先生・以下同)
また、大人の風邪の原因の30〜50%を占めるのがライノウイルスで、これは鼻風邪ウイルスともいわれている。
「これらのウイルスに対して一部のウイルスは高温多湿の環境を好み、夏に活動的になり、夏の風邪の原因になります。その代表がエンテロウイルスやアデノウイルスです。エンテロ(腸)、アデノ(喉)という名称が示すとおり、腹痛や下痢、喉の痛みなどが特徴的な症状の風邪です。冬の風邪は、くしゃみなどで起こる飛まつ感染が多いのに比べ、これら夏の風邪は、患者のだ液、たん、鼻の粘液などが人の手などに直接ふれることで、口を通って侵入するような経口感染が多くなります」
大谷先生は、低温で乾燥した環境を好むウイルスが冬の風邪を起こすと言う。
「冬の風邪と夏の風邪とはウイルスの種類が違ってきますが、いずれにしても基本的に風邪のウイルスに対する薬というものはなく、治療はできるだけ睡眠を取り、体力や免疫力を高めてウイルスの力を抑え、自然に治るのを待つということになります」
そこで、風邪予防が大切になってくる。特に外出後には手洗い、うがいを心がけ、風邪をひいた場合は飛まつ感染でほかの人にうつさないためにもマスクは必ず着用しよう。