ここ数年アニサキス騒動で一躍クローズアップされてきた「食中毒」だが、湿度と気温が上がるこれからの季節は特に注意が必要だ。

 

「確かに少し前までは、食中毒の発生が多いのは夏場でした。ですが、ノロウイルスが食中毒として認知され始めてから、一年中何らかの食中毒が起きている状態だといえます。ノロウイルスは冬の感染が多いですが、じつは夏でも油断できません」

 

こう話すのは、日本獣医生命科学大学客員教授で、食品衛生コンサルタントとしても活動する池亀公和さん。食中毒の原因として多いのは、食品に潜む微生物による食中毒だという。

 

「そのなかでも、付着した後に菌が増殖して感染する『増殖型』の食中毒と、少量体内に入っただけでも発症する『汚染型』の食中毒の2種類がありますが、感染者が多いのは、後者のほうです」(池亀さん・以下同)

 

平成29年の原因物質別微生物食中毒発生率(食品・環境安全ネット)を見てみると、圧倒的に多いのが汚染型の「カンピロバクター」(48%)と「ノロウイルス」(32%)。いっぽう、増殖型の代表で夏に感染しやすい「黄色ブドウ球菌」はそのほか20%の一部にすぎず、それほど多くない。

 

「気温の高い夏は菌が増殖しやすい環境。黄色ブドウ球菌は、米や肉などの表面で増殖し、エンテロトキシンという毒素を出します。米の表面はとくに毒素を出しやすい環境なので、夏のお弁当事情を考えると、注意すべき存在です。とはいえ、黄色ブドウ球菌は増殖しても10万個程度なら、体内に入っても発症しません。いっぽう汚染型のカンピロバクターは、たとえ100個でも体内に入ったら最後、下痢や嘔吐など食中毒症状を引き起こします」

 

カンピロバクターの感染は、とくに夏が多いと、池亀さんは注意を促す。

 

「これからの季節は屋外でバーベキューをする機会も多いと思います。肉を生焼けのまま食べてカンピロバクターに感染し、発症するケースが後を絶ちません。なかでも鶏肉は注意。市販の鶏肉のほとんどがカンピロバクターに汚染されているというデータもあるほどなので、しっかり中まで火が通っていることを確認しましょう。カンピロバクターは熱に弱いので、加熱すれば死滅します」

 

カンピロバクターと同じ汚染型のノロウイルスは、冬に流行する微生物だが、夏でも感染の危険が。

 

「もともとノロウイルスは、二枚貝に蓄積されています。イワガキなどは夏が旬ですので、そうした二枚貝を摂取した人の体内で一気に増殖。たとえ本人に症状が出なくても、糞便を介してほかの人に感染し、症状を起こす場合があります。トイレで排せつ物を流したとき、目に見えない飛沫となってドアノブなどに飛び散った糞便を触ると感染するのです。ノロウイルスに触れた手で調理をすると、それを食べた人に一気に広がるケースも。ノロウイルに集団感染が多いのは、そのためです」