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「熱中症は暑い真夏にだけ起きることではありません。乳幼児や高齢者への注意喚起はよくされていますが、季節の変わり目の今だからこそ、すべての人が注意しなければならないのです」

 

“秋の熱中症”への注意を促すのは、「教えて!『かくれ脱水』委員会」委員長で、兵庫医科大学特別招聘教授の服部益治医師だ。

 

今年も年間約1,000人もの人が亡くなる熱中症。熱中症とは、主に高温・多湿・無風の環境下で、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりして発症する障害の総称だ。外気の変化によって水分が損失すると、体内の塩分濃度が高くなる。そこで、体は電解質濃度を保つために利尿も促し、熱中症を引き起こしてしまう、という仕組みになっている。

 

「人間は成人で約60%が血液などの体液を含む水分でできています。脱水症は水分損失量が3%以上のことを指し、7%以上になると、けいれんを起こしたり意識がなくなったり、急を要する危険な状態に。そこまでいかずとも、季節の変わり目には脱水症一歩手前、1~2%の水分損失量の“隠れ脱水”の人が実はとても増えるのです」(服部先生・以下同)

 

それでは、ようやく涼しくなり、過ごしやすい季節になったというのに、秋にも熱中症や“隠れ脱水”が起こるのは、どうして?

 

「人間は体温を一定に保って生命維持をしている恒温動物です。体温の変動に対して弱い生物なのです。季節の変わり目は暑い日もあれば、涼しい日もあり、さらに1日の気温差も激しい。夏の疲れが蓄積して体力が落ちている今の季節は、体温調整や体液調整がうまくできず、熱中症になってしまう人が多いのです」

 

汗を大量にかく暑い夏のほうが、意識的に水分を取ろうと注意する。しかし、涼しくなり汗をかかなくなったため、「水分を取らなくても大丈夫だろう」と油断する。そのこと自体が、熱中症予備軍である“隠れ脱水”を引き起こしてしまう大きな要因になるのだ。

 

もし、下痢、嘔吐、発熱などによって脱水症になってしまったら、食塩とブドウ糖を水に溶かした経口補水液を飲むのがオススメ。経口補水液は小腸から速やかに水分と栄養分が補給できるからだ。しかし、ふだんの生活ではアルコールやカフェインを含む飲料以外の水分を意識的に取ればOK。

 

「ただし、一度にたくさんの水分補給をしても、胃腸では一気に水分を吸収できません。1~2時間ごとに100~200ミリリットルの水分を飲むようにしましょう」

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