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今や4人に1人が持っている国民病ともいえる腰痛。そのうちの8割以上は非特異的腰痛という、いわゆる画像診断で症例のつかない腰痛だという。腰部脊柱管狭窄症など背骨の病気の専門家で、都立広尾病院整形外科医長の平尾雄二郎先生は、「姿勢」と「歩幅」が腰痛に関係していると指摘する。

 

「非特異的腰痛の人は猫背で前傾、首が前に出ているなど姿勢が悪く、狭い歩幅で、“トボトボ歩き”をする傾向がありますが、それは体幹が衰えている証拠です。体幹が衰えると、背骨が固まり、背骨と股関節をつなぐ腸腰筋の働きが衰え、腰が後ろにひけた歩き方になります。これが、狭い歩幅につながり、果ては慢性的な腰痛の原因となっているのです」

 

猫背、肩が内側に入っている、前傾姿勢など姿勢が悪いと、見た目にも老けた印象を与える。ところが、「正しい姿勢」で歩く習慣をつけると、衰えた体幹に刺激が入って「広い歩幅」で歩けるようになり、腰痛の予防・改善にもなると平尾先生は言う。

 

平尾先生がすすめる「広い歩幅」とは、「65.1cm以上」を指すが、実は、この「65.1cm」は、認知症予防としても推奨されている。

 

「65.1cm」の発見者で、国立環境研究所の主任研究員(前東京都健康長寿医療センター)の谷口優先生は、高齢者の身体機能の低下と歩幅の関係を、長年研究している。高齢者666人を、「歩幅が狭い(58.2cm未満)」、「普通(58.2~65.1cm未満)」、「歩幅が広い(65.1cm以上)」の3群に分けて認知機能低下リスクを調査したところ、「歩幅が広い」グループを1とすると、「歩幅が狭い」グループは3.39倍の認知症リスクがあることがわかった。

 

また別の調査で、1,686人を最長12年間追跡調査したところ、歩幅が狭いまま年を重ねる人たちの認知症リスクは、広い人に比べ3.3倍に上がったという結果も得ている。「歩幅の広さ」が脳の働きと深い関係にあることは、今では世界的にも注目されているトピックなのだとか。

 

「脳の萎縮や血流量の減少が認められる人は、歩幅が狭くなっていることがわかっています。逆を言えば、歩幅が広ければ認知症を防げているといえるでしょう」(谷口先生)

 

では、65.1cmとは、どれくらいの歩幅だろうか。目安は「横断歩道の白線をまたげるかどうか」だ。

 

65.1cmの歩幅で歩ける体を作るため、平尾先生がすすめている、歩く前の姿勢をチェックと、体幹を作るエクササイズを紹介しよう。

 

まずは正しい姿勢のチェックから。

 

壁に背をつけて立ったとき、「後頭部」「肩」「お尻」「ふくらはぎ」「かかと」の5点が壁につくか。左右の「肩」「骨盤」の高さが同じか。手の甲が前ではなく横を向いているか。膝が真正面を向いているか。足のラインがまっすぐか。つま先が正面を向いているかを確認する。

 

次に猫背を直し、正しく歩くためのコブラのポーズのエクササイズ。

 

1)手のひらは上に向けて親指を後ろにねじり、胸を旋回させる。胸を張る。指を広げる。首の後ろの筋肉はリラックスさせて。

2)肩甲骨を体の内側に寄せた後、息を大きく吸いながら、腕と一緒に引き上げる。胸をできるだけ張る。

3)息を吐きながら手のひらを下にしてストンと落とす。5回繰り返す。

 

「コブラのポーズで猫背が改善されると、胸椎のねじれや腸腰筋の伸び縮みが活性化され、結果的に歩幅が広くなります」(平尾先生)

 

最後に、正しい歩き方を実践しよう。

 

ポイントは胸を高い位置に保つことと、左右の肩を前後に振る動きを歩行中に取り入れることだ。

 

「正しい歩き方ができるようになると、腰痛の予防・改善・認知症予防だけでなく、若々しく見えるという、女性にはうれしいメリットもついてきます」(平尾先生)

 

健康寿命を延ばすためにも、「正しい姿勢」と「広い歩幅」を意識することから始めよう。

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