高知大学名誉教授で高知総合リハビリテーション病院院長・小川恭弘医師 画像を見る

「現在イギリスで進んでいるコータックの臨床治験の内容が評価され、コータック認可に必要な、次の治験のめどがつきました。日本の皆さんにも、広く治療を受けていただけるチャンスが、また一歩近づいたんです」

 

興奮気味に語るのは、がんの放射線増感療法「コータック」発明者で高知大学名誉教授・高知総合リハビリテーション病院院長の小川恭弘医師だ。

 

コータック治療とは、乳がんや、臓器・骨にできる固形がんの放射線治療を行う際に、オキシドールとヒアルロン酸の混合液をがんに注射する画期的な治療法。放射線の効き目を飛躍的に増大させる効果がある。がん治療薬というと、ノーベル賞受賞で有名になった「オプジーボ」など「費用が1年に数千万円もする」という高価なイメージがあるが、コータックの治療費は、1回わずか500円ほどだ。

 

「2006年の開発以来、この治療法での症例は、全国で個々に手掛ける医師と私の担当分を合わせて1千例を超えており、直径15センチの乳がんを消失させた例や、末期の直腸がんを治した例もあります。しかし現在まで日本では、治療費(薬価)が“安すぎ”て、製薬会社が開発に二の足を踏んでいたため、コータックは保険適用がされていません。いますぐにこの治療を必要とする患者さんが、治療を受けにくい状況が続いていたんです」

 

そこで小川医師と株式会社KORTUCは海外での認証を目指し、イギリス・ロンドンのロイヤル・マーズデン病院では治験が行われ、効果や安全性の確認作業が繰り返されてきた。8月27日にはイギリスで、その治験フェーズ1の好結果が発表されており、フェーズ2の一刻も早いスタートが待たれていた。

 

ここに来て日本国内から、イギリスでの治験を支えてくれる会社が現れたという。

 

「9月20日、大手総合商社『双日』さんと、投資信託会社『スパークス・グループ』さんが、相次いで出資を表明してくれました。それぞれ5億円、1億円という大型出資をしていただけるんです。というのも、イギリスで行っている治験には、最低でも6億円必要だと聞かされていました。治験には莫大な費用が掛かりますが、これで、治験が、スムースに進めることができます。がんの治療法として、イギリスでコータックが認可されると、日本での保険適用にも弾みがつきます」

 

コータックには、ほかにもグローバルな展開があった。イギリスの医師たちが同治療をインドで指導・普及するための補助金を、ロンドン大学のがん研究所が出してくれることが決まったという。

 

今回、コータックの普及・指導が進められることとなったインドは、人口が15憶人以上まで膨れ上がっている。小川医師は、インドでのコータック治療普及の意味を、こう語る。

 

「インドでは、オプジーボなどのような数千万円規模の高価な薬を使う余裕はなく、医療水準も全体的には低いとされています。そのため、イギリスでの治験で実証されつつあるように、安全であり、1回の薬代が500円未満という安価であるコータックは、その需要に応えやすいんです」

 

イギリスでの治験は順調に進み、その波及効果として開発途上国での普及も、急速に進もうとしている。

 

「イギリスでの臨床治験のフェーズ2は、10月14日のロンドンでの会議で正式にスタートの笛が鳴らされます。並行して、アフリカ支援の動きとして、私自身が11月に、長崎県島原病院の小幡史郎診療部長とともにケニアに渡ります。そこで現地状況の把握と、コータック治療を実践するための足場固めを行ってきます。3年後の2022年に日本国内認可、保険適用と見据えていたビジョンも、この展開だと、さらに前倒しして実現できる可能性も出てきました」

 

世界中でコータックの施術を待つがん患者のために、小川医師が執念で進めるイギリスでの治験。いい経過報告が期待される。

 

 

『免疫療法を超えるがん治療革命』

著者:小川恭弘(高知大学名誉教授)
価格:1,500円+税
出版:光文社
https://www.amazon.co.jp/dp/4334951007/

 

小川恭弘先生が研究を重ね、実績を積んできた増感放射線療法コータックを紹介。「コロンブスの卵」的な発想が生まれたいきさつや、コータックで命を救われた患者さんの声が満載。患者さん本位の治療を目指してきた小川先生の集大成的な書。

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