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「たいして食べていないのに体重増加が止まらない、気が重くてやる気が出ない、集中力が落ちて本の内容が頭に入ってこない……加齢につきものと思われがちなこうした悩みには、じつはホルモンが関係しています。裏を返せば、ホルモンさえコントロールできれば、悩みは解消できるのです」

 

そう話すのは、これまで減量外来で多くの人のダイエットを成功に導いてきた工藤内科医院副院長の工藤孝文先生。

 

「ホルモンという概念は20世紀初頭に確立されたものですが、あらゆる臓器から分泌され、体全体に影響を及ぼしていると考えられています。ですから、太るも痩せるも、体調や気分の良しあしも、すべてはホルモン次第。さらには、人間関係や仕事の成否など、ホルモンは人生のすべてに影響を与えていると言ってもいいでしょう」

 

ホルモンは、これまでに100種類以上が確認されているが、まだまだその働きの全貌は明らかにされていないだけに、近年、これまでの常識を覆す発見も相次いでいるという。

 

まずはホルモンの基礎知識を確認しておこう。

 

「ホルモンは、日常生活のさまざまな場面で神経細胞から分泌され、血液にのって各細胞に情報を伝達しています。わかりやすい例を挙げると、睡眠ホルモンのメラトニンは、暗くなると脳から分泌され、脳の興奮を鎮めて体温を下げ、眠気を誘います。『夜が来たぞ!』と体に教えて、眠る準備を整えてくれるのです。眠気のようにコントロールが難しい欲求は、まさにホルモンのしわざ。抑えきれない食欲や、生理前のイライラ感も同様です」

 

つまり、ホルモンさえコントロールできれば、一見、制御不能に思える欲求に手綱をつけることも可能となるのだ。

 

「ホルモンの分泌には体内時計のほかに、食事、ストレス、月経周期、加齢などが影響しています。このうち体内時計、食事、ストレスは自分でコントロール可能。生活習慣や食事にひと工夫加えたり、軽い運動を取り入れるだけで、見た目や体調、気分が変わってくるのを感じられますよ」

 

さらに、ホルモンと同時に注目したいのが自律神経の働き。この両者は相互に働き、体内環境を一定に保てるように調整している。

 

「人間は、変温動物と違って、気温にかかわらず常に一定の体温をたもっています。これができるのは、自律神経とホルモンの両者が協力して働いているから。自律神経は、体温や心臓の働きなどを瞬時に自動調整します。いっぽう、ホルモンは血液にのって運ばれるため反応が出るまで時間がかかりますが、そのぶん長く働きます」

 

たとえば、急に上司から怒られたとき、驚いて心臓がドキッとするのは、自律神経による反応だが、その後、席に戻ってもドキドキが収まらないのは、ホルモンによる反応だという。

 

自律神経には、アクティブなときに働く交感神経とリラックスしているときに働く副交感神経があり、このバランスが整うと、ホルモンの働きもアップする。

 

「前者はいわばアクセル、後者はブレーキで、この両方の機能を同時に高めることで、バランスが整います。両者はスイッチのように切り替わるものと考えている人も多いのですが、じつはそれは誤り。たとえば、副交感神経が優位となる睡眠中も交感神経は完全にオフになることはありません。状況に応じて、アクセル、ブレーキがスムーズに反応できるようどちらも整えておくことが大事です。そのために心がけたいのは次の3つ。睡眠をきちんととって体内時計を整えることと、1日三食、健康的な食事をとること。そして、仕事や家事の最中にも休憩をとり、夜は湯船にしっかり浸かるなどして、ストレスをこまめに解消すること。ほかにも、ゆっくりしゃべったり、前向きな言葉を口にするだけでも効果があります」

 

「女性自身」2020年11月24日号 掲載

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