日ごろの食事に関する誤った習慣が、認知症リスクを高めることになると医師は警鐘を鳴らす。そのなかには、体のためを思って多くの人がやりがちなものも。思い当たる項目があるという人はくれぐれもご注意をーー!
2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になるという推計(’17年・厚生労働省)もあるなど、社会問題化している認知症。発症したくないと脳トレに励む人もいるだろう。だが“栄養番長”として知られる医師の姫野友美先生は、「脳の健康は、脳トレだけでは守れない」と話す。
「大切なのは、脳に必要な栄養をしっかり取って、不必要なものは体内に入れないこと。『腸脳相関』といって、腸と脳は密接に影響し合っていることが知られています。脳の健康を考えるなら、腸内環境の改善から始めるのが効果的なのです」(姫野先生・以下同)
なかでも、糖質の取りすぎによる体の“糖化”が、体はもちろん、脳にも重大な影響を及ぼすという。
「糖化による“コゲ”だけでも問題ですが、“酸化”の“サビ”と結びつくとさらに厄介です。糖やタンパク質が糖化・酸化のダブルパンチで、老化と密接に関わる『終末糖化産物』に変性すると、もはや簡単には修復できません」
そのうえ、コゲつき、サビて、もろくなった器官には、“カビ”も発生しやすい。これらコゲ・サビ・カビが、一生消えないシミになり、老化を加速させる。認知症になる脳には、シミがたくさんあるというから、恐ろしい限りだ。
また、認知症は“第3の糖尿病”ともいわれる。体質的な1型糖尿病、生活習慣病の2型糖尿病は、糖をエネルギーに変えるインスリンの作用が不足することで血糖値がコントロールできずに発症する。ブドウ糖をエネルギー源とする脳で、同じようにインスリンが効かなくなると、脳のエネルギーが不足して認知症を発症する。
糖尿病の人は、そうでない人より、血管性認知症に約2.5倍、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすいという報告もある(糖尿病情報センター)。糖尿病で高血糖が続くと認知症を招きやすくなるのだ。食生活がこのリスクを高めていると姫野先生は指摘する。
そこで、私たちがやりがちな「認知症を招く危険な食生活10」を解説してもらった。
【1】腸内環境改善のため、ヨーグルトを毎日食べる
〈危険な症状〉ヨーグルトの取りすぎで、乳タンパクのβカゼインA1が腸粘膜の炎症を起こす。腸粘膜のバリア機能が低下し、脳に有害物質が侵入して認知症が誘発されることも。
〈危険な症状を起こさないために〉豆乳ヨーグルト、キムチなどの漬け物類、納豆やみそ、塩こうじなどの発酵食品から、多種類の腸内細菌を取りバランスを整える。
【2】朝はスムージーか野菜ジュースで、ビタミンチャージ
〈危険な症状〉ビタミンやミネラルは時間がたつと酸化しサビの原因に。ミキサーの使用で野菜の糖質が吸収されやすくなり、コゲも進む。サビ+コゲで認知症リスクに。
〈危険な症状を起こさないために〉野菜は「飲む」のではなく、「食べる」習慣を。サラダや蒸し野菜、ゆで野菜、煮物などにして、よくかんで食べる。
「ビタミンは必要ですが、野菜ジュースのように加工してから時間がたったものは、ビタミンやミネラルの酸化が進んでいます。また、ミキサーですり潰すことで糖質の吸収率は上がってしまいます。野菜は飲むより、よくかんで食べるよう心がけましょう」
【3】「油はダイエットの敵」だから取らない
〈危険な症状〉脂質は細胞膜を強く柔らかくするために必要な栄養素。オメガ3系脂肪酸などは積極的に摂取し認知症を予防したい。避けたいのはトランス脂肪酸。
〈危険な症状を起こさないために〉サラダ油の代わりに、オメガ3系脂肪酸(亜麻仁油、えごま油、魚油)を中心に。炒め物はオリーブ油で。
「油をすべて避ける人がいますが、オメガ3系脂肪酸は認知症予防にも有効。積極的に取りましょう」
【4】ランチは腹八分! 軽めのうどん、ラーメンなどの麺類で
〈危険な症状〉小麦粉に含まれる糖質はコゲの原因に。大盛りで食べ続けると、小麦タンパクのグルテンが腸粘膜を荒らし、“腸もれ”を起こして、認知症まっしぐら。
〈危険な症状を起こさないために〉パスタ→リゾット、うどん→十割そば、天ぷらそば→月見そば、ラーメン→ビーフンやフォーと、グルテンを減らすよう置き換える。
「腹八分を意識してランチを軽めにしたい人は、手軽な麺類を選びがち。でも、麺類に多く含まれる小麦タンパクのグルテンは腸を荒らし、体によくないものも通してしまう“腸もれ”を起こす原因となります。できるだけ小麦タンパクは避けましょう。どうしても麺類が食べたいときは、うどんを十割そば、ラーメンをビーフンやフォーなどに置き換えるのも手です」
【5】時間がなくても朝ごはんは大切! 菓子パンでエネルギー補給
〈危険な症状〉菓子パンはカロリーのわりに栄養不足。砂糖+小麦粉=糖質過多の典型的なコゲる食生活。“毎朝菓子パン”派は認知症予備群かも。
〈危険な症状を起こさないために〉タンパク質のおかずを2品食べるようにする。(例)目玉焼きに納豆ごはんと野菜入りのみそ汁。
「朝食を欠かさないのはよいことですが、時間がないからと菓子パンで済ませるのはNG。砂糖と小麦粉の塊である菓子パンは、典型的な糖質過多です」
【6】揚げ物は食べすぎないように、スーパーの総菜を利用
〈危険な症状〉時間がたち酸化した揚げ物は、体や脳をサビつかせる。衣はほぼ糖質でコゲの原因に。脳がサビ+コゲで、アルツハイマー病などに急接近。
〈危険な症状を起こさないために〉揚げ物を食べるなら新しい油を使った揚げたてを。フライ衣は大豆粉やおからパウダーなどで薄い衣にするか、素揚げにする。
「食べすぎないようにと、少量を手軽に購入できるお総菜の揚げ物を利用する人もいるようですが、揚げてから時間がたつものは酸化の悪影響を受けます」
【7】タピオカはやめられないから、飲んだ日は夕食控えめで調整
〈危険な症状〉タピオカの原料はキャッサバ芋。ミルクティーにも大量の砂糖。タピオカミルクティーはまさに糖質の塊! 常飲は老化を加速し、脳機能もダウン。
〈危険な症状を起こさないために〉肌はシワシワ、骨はスカスカ、脳の機能も低下……のスパイラルを避けるには、スイーツは「糖質オフ」か「低糖質」を選ぶ。
「はやりのタピオカミルクティーは典型的な糖質過多です。コゲが全身を老化させ、その先に認知症が待っていると思うと、我慢もできるのではないでしょうか」
【8】もう年だから「肉は少なめ、植物性タンパク質が多め」を心がける
〈危険な症状〉動物性タンパク質には鉄、亜鉛、セレンなど抗酸化力アップに役立つミネラルが豊富。植物性タンパク質だけでは不十分なため、認知症のリスク要因に。
〈危険な症状を起こさないために〉豆腐や納豆など植物性タンパク質も取りながら、肉、魚、卵などをバランスよく取ることで抗酸化システムを働かせる。
「胃がもたれるからと肉を食べない人がいますが、動物性タンパク質は抗酸化力をアップするビタミンB群やミネラルが豊富。肉類もしっかり食べましょう」
【9】お酒は「百薬の長」。おつまみは食べず、お酒だけを楽しむ
〈危険な症状〉飲みすぎや「お酒だけ」では、ビタミンB12や葉酸を減らし、脳を萎縮させる原因に。認知症患者の脳はビタミンB12が足りていないというデータも。
〈危険な症状を起こさないために〉「食べながら飲む」習慣を。おつまみにはカキやサンマ、アサリ、ホタテ貝、アボカド、菜の花、枝豆などがおすすめ。
【10】骨を強く保つために、小魚をせっせと食べている
〈危険な症状〉強い骨のためには「小魚だけ」より糖質制限のほうが重要。骨が弱ると、記憶力に関係するホルモンが減少する。「骨折すると認知症になりやすい」説も。
〈危険な症状を起こさないために〉カルシウムとマグネシウム、ほかのミネラルをバランスよく摂取。マグネシウムはアーモンド、ワカメ、納豆、ごまなどに多い。
とはいえ、糖質など体によくないといわれるものほど、おいしくて、食べたくなってしまうのだが。
「どうしても食べたいときは、代替食品を探してみてください。豆腐からつくられたそうめんや、大豆などを使った100%植物性のピザ、米粉パンなどもおいしいですよ」
認知症における脳の萎縮は、発症の20年前から始まるといわれている。早いうちの対策が鉄則だ。
「誤った食生活を見直し、認知症リスクを遠ざけましょう!」
「女性自身」2020年12月1日・8日合併号 掲載