「苦しむ病気ワースト5」 3位COPDは溺れるような息苦しさ
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最先端の医療をもってしても、苦しみから逃れられない病気はある……。どれほどつらいのか、防ぐすべはあるのか? 患者の苦しみを目の当たりにする医師に聞いたーー。

 

「呼吸器系の病気を選ぶ医師が多いという印象を受けました。たばこが原因となることも多く、喫煙者は要注意です」

 

常磐病院(福島県)の乳腺外科医・尾崎章彦さんが感想を述べるのは、医師33人を対象に行った“本当に苦しむ病気”アンケートの集計結果についてだ。ナビタスクリニック(東京都)の内科医・久住英二さんはこう見ている。

 

「アンケート結果には、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のように、予防や治療が困難な病気もありますが、生活習慣の改善や健診でリスクを減らすことができるものもあります。ぜひ健康に留意する機会にしてほしいです」

 

■「本当に苦しむ病気」ワースト5

 

・第1位「すい臓がん」60点
・第2位「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」42点
・第3位「COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫」37点
・第4位「脳卒中」33点
・第5位「認知症」28点
・同率第5位「間質性肺炎、肺線維症」28点

 

※医師33人に対しアンケートを実施。苦しむ病気を順位付けをしてもらい、1位…5点、2位…4点、3位…3点、4位…2点、5位以下…1点で集計した。

 

ワースト5の病気について、久住さん、尾崎さん、そして小泉小児科医院院長の釜萢敏さんに解説してもらった。

 

【第1位】すい臓がん

 

化学療法が効きづらく治りにくいすい臓がん。「小さながんでも転移しやすく、周囲の神経に浸潤すると激痛をもたらす」と悪性度や痛みが強いことが理由として挙げられた。また、「初期には自覚症状がないため、発覚した時には余命が少なくなっている」と精神的な苦痛も大きいようだ。

 

「自覚症状が少なく、早期発見が困難なすい臓がん。場合によってはがんになった部位を周囲の臓器ごと切除し、再度臓器同士をつなげ合わせる難しい手術になることも。重い合併症が発生すれば、退院できないまま亡くなるケースもあります。すい臓の近くにある神経を巻き込んで、激しい痛みがでることも少なくありません。“肥満の人は20%リスクが上がる”“糖尿病が原因”といわれることもありますから、該当する人は、生活習慣を見直す努力をしてください」(尾崎さん)

 

【第2位】ALS(筋萎縮性側索硬化症)

 

“意識がはっきりしているなかで、だんだんと体が動かなくなっていく”ことへの恐怖感が非常に強いALS。「介護をしてくれる人に対し、申し訳なさなどを抱えている患者さんも多い」と語る医師も。

 

「筋肉が衰えていく神経難病で、徐々に手足が動かなくなり、いずれ寝たきりになります。身体機能を奪われても、患者さんの意識がクリアであることが多く、精神的な苦痛が非常に強い。自力での呼吸が難しくなれば人工呼吸器 をつけることになりますが、一度装着すると、患者さんがはずしてと訴えても、“殺人”になってしまうため、医師がはずすことはできません。そのため、そもそも呼吸器を選ばない、つまり死を選ぶ人もいます。人工呼吸器の取り扱い方の議論のきっかけにもなってほしいです」(久住さん)

 

【第3位】COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫

 

呼吸困難が一生続くというCOPD。その苦しさは「ずっと溺れているような感覚」といわれるほど。「禁煙である程度避けることができるので、患者さんはたばこを吸わなければよかったと後悔している」と、心身ともに苦しむようだ。

 

「別名『たばこ病』と呼ばれるCOPD。患者の8割は喫煙者で、喫煙量・期間が延びるほど発症しやすくなります。肺に続く空気の通り道が狭くなるので、ちょっとした歩行でも息切れを起こすように。悪化すると、つねに酸素ボンベが必要になることも」(尾崎さん)

 

【第4位】脳卒中

 

脳の血管が詰まったり破れたりする脳卒中。くも膜下出血の際には「金庫で頭をかち割られるくらい痛い」とも。また、「麻痺などの後遺症で意思疎通、体を動かすのが困難になるケースがある」と後遺症の苦しみも大きい。

 

「脳出血・脳梗塞、くも膜下出血などの総称です。脳の損傷部位によっては麻痺が残ったり、前頭葉に病変があれば人格が変わってしまうこともあります」(久住さん)

 

「助かった場合でも後遺症が残りやすく、家族の負担も大きくなりやすい。糖尿病や肥満、喫煙習慣などにより発症リスクが上がります」(尾崎さん)

 

【第5位】認知症

 

認知症は「家族の負担が大きい」「自分が自分でなくなる」などがよく知られているが、それゆえ「早期の場合に、自分が認知症だと告知された際の精神的ダメージはかなり大きい」のだそう。

 

「認知症の早期には、当たり前にできていたことができなくなることに対し、強い葛藤を抱えます。病気を受け入れなければなりませんが、なかなか受け止めきれないのが人間の性です」(釜萢さん)

 

「認知症の20〜30%を占めるのは脳血管性認知症です。脳の血流が滞り、小さい脳梗塞ができることなどで起こります。“生活に支障がない”と、高血圧や高コレステロールを甘く見ている人は要注意。最近では歯周病と認知症の関連も研究されており、歯の健康を保つことも重要な予防策となるでしょう」(久住さん)

 

【同率第5位】間質性肺炎、肺線維症

 

治りにくく、かなりの呼吸苦を伴うという間質性肺炎。肺が硬くなることでせきや息苦しさが生じるが、病状によっては「5メートルも歩けないほど」だという。

 

「肺の壁が厚くなり、硬い風船のようになって“空気が吸えない”状態になる間質性肺炎。5メートル歩いただけでも、100メートル全力疾走したように息切れしてしまう患者さんもいます」(尾崎さん)

 

最後に釜萢さんが、こうアドバイスする。

 

「コロナ禍で受診控えをする人が多いのですが、医療機関は万全の感染対策をしています。気になる症状がある場合や定期的な受診を勧められている人は、通院を怠らないようにしてください」

 

自分がつらいだけでなく、家族の負担も大きくなるのが“本当に苦しむ病気”。病気になってしまった人たちの苦しみはとても大きなものだ。しかし、予防できるものや、早期発見で治せるものもある。日ごろの生活習慣を見直しつつ、自治体が実施する検診などは、積極的に利用したい。

 

「女性自身」2021年1月5日・12日合併号 掲載

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