長引く新型コロナの影響で、巣ごもり生活が続くと、加齢とともに心身の活力が低下する“フレイル”に陥りやすくなる。
「趣味のサークル活動や友人との集まりも控えるようになり、家にいてもやることがないという人も多いと思います。外出自粛などの感染予防はもちろん不可欠ですが、その一方で日常生活の極端な変化はフレイルだけでなく、認知症リスクまでも高めてしまうので注意が必要です」
そう語るのは、認知症予防が専門の医師で東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授。瀧教授はコロナの感染予防をしながらも、フレイルを防ぎ、認知症リスクを下げる「セルフトレーニング」を提唱している。
記憶力の衰えを「もう年だから忘れやすいのは仕方がない」と諦めてしまう人も少なくないが、それは大きな間違いだ。
「記憶をつかさどる海馬が活性化すれば、記憶力は高まってきます。脳の活性化に役立つのは神経細胞の栄養となるBDNF(脳由来神経栄養因子)で、これは加齢とともに減少し、脳の萎縮が進んでいる人ほど少ない傾向にありますが、年齢にかかわらず有酸素運動を行えばBDNFを増やすことができます。さらに、少し前までの“大人の脳は成長しない”という常識は、’11年に発表されたアメリカピッツバーグ大学の研究で覆されています。55〜80歳の男女120人を対象に行った調査では、1年間にわたって有酸素運動を継続したグループは、海馬の体積が約2%増えていたのに対し、行わなかったグループは約1.4%減少していました。このことから『有酸素運動は記憶力を高める特効薬であること』が明らかになったのです」(瀧先生・以下同)
緊急事態宣言の発出ということもあり、外出を避けたいという場合でも自宅でできる次のトレーニングを取り入れてみよう。
【階段上り下り】
(1)最初は歩くスピードで、階段を10秒ぐらいかけて上がる。
(2)10秒かけてゆっくりと階段を下りる。上り10秒→下り10秒を3セット繰り返す。
【イスもも上げ】
(1)イスに座って座面を持ち、背筋を伸ばす。
(2)片足を床と水平になるように上げる。
(3)反対の足も同様に行う。
【スクワット】
(1)両足を肩幅より少し広めに開いて、背筋を伸ばして立ち、つま先はやや外側に向ける。
(2)ひざをつま先より前に出さないで、ゆっくりとひざを曲げて腰を下ろす。背中が曲がらないように気をつける。
【目をつぶって片足立ち】
(1)目を開けて片足で立つ。
(2)そのまま目を閉じて60秒間片足で立つ。
【後ろ歩き】
(1)腰に手を当てて背筋を伸ばす。
(2)後ろにゆっくり歩く。
(3)慣れてきたらつま先立ちで歩く。
「もっとも手軽に効果が得られるのは、階段を使った運動です。『階段上り下り』では、10秒階段を上がり、下りてまた上がる……ことを3回繰り返します。また、歩かなくなると認知機能は極端に低下してしまうので、下半身の筋肉を鍛える『スクワット』は転倒予防にも効果的です。スクワットがきつくてしんどい、という人は、イスに座ってできる『イスもも上げ』から始めましょう。テレビを見ながらでもできます」
有酸素運動ではないが、「後ろ歩き」も、ふだん使わない動きをすることで脳に刺激を与えるという。転ばないように、床に物が置いていないことを確認し、段差がないところで歩いてみよう。
「女性自身」2021年2月9日号 掲載