■新規患者には薬を処方できないことも
さらに、ジェネリックの不足により、同じ成分の先発薬まで品薄になってしまっているという。
先発薬を製造する大手製薬会社の広報担当は、本誌の取材に対し「ジェネリックの供給不足で予想以上に先発薬の需要が高まり、製造が追いついていない」と語る。
そのうえ、11月末に複数の製薬会社が薬を保管する大阪の大規模倉庫で火災が発生。品薄に拍車をかけそうだ。
「命に関わるような薬も足りない」と、前出のAさんは続ける。
「たとえば、てんかんを抑える“デパケン”という薬。この薬は、後発薬も含めもう半年くらい納品がありません。また、初期の心不全の患者さんが、症状を悪化させないために服用する“メインテート”という心臓病の薬も入荷しません」
つい先日も、こんなことがあった。
「腰の曲がった80代の女性がメインテートを探して、もう8軒も調剤薬局を回っていると言ってうちの薬局に来られたんです。体調の悪い旦那さんに代わって探していたようで……。定期的に来られる患者さんの分だけはギリギリ薬を確保していたので、その女性には、別の患者さんの確保分からお出しすることにしました」
本来、患者が必要としている薬を薬剤師が調剤しない行為は、薬剤師法で禁止されている。しかし、薬が枯渇する現状では、どこの薬局も、定期診療の患者分を確保することで精いっぱいなのだ。
本記事の末尾には、使用者が多いと思われる薬で出荷調整などになっているものと、今後需要がひっ迫しそうなものを一部掲載した。すでに降圧薬や胃腸薬、骨粗しょう症の薬など、供給不足の薬の種類は多岐にわたっている。
「いまはなんとか足りている花粉症やアレルギーなどの先発薬も、春にかけて需要が高まれば、いつ不足するかわかりません」