マスクフリーの日々が戻ってきたが、気がつけば鼻や口周りのケアが怠りがちになっていたことを認めざるをえない人も少なくないはず。「よく見たら、鼻毛が飛び出していた……」なんてことも珍しくないかもしれない。
しかし、相手が女性だと「アナタ、鼻毛が見えていますよ」なんて指摘、なかなかしづらいものだ。“人の振り見てわが振り直せ”とばかり、にわかに鼻毛チェックを始める人も多いだろう。
ところが、あわてて一気に抜いたり切ったりするのはタブーなのだという。みらいクリニック院長の今井一彰先生はこう言う。
「私たちの体で不要なものは何一つなく、鼻毛にも私たちの体を守るための大切な機能が備わっています。しかし、意外とその大切さは認知されていません」
鼻毛には大きく分けて2つの役割があるのだという。一つは鼻腔内の温度と湿度の調整機能、そして、もう一つがフィルターとしての役割だ。
「鼻で息を吸うときは鼻腔に潤いを与え、吐くときは水分を抑えた空気を出して鼻腔の潤いを保つといった、湿度と温度の調整をしています。鼻毛は鼻の中の粘膜を乾燥から守ってくれているのです」
鼻毛の働きが実感できるのが、サウナに入ったときだ。空気が乾燥している熱いサウナの中で鼻から息を吸うと、鼻の奥に痛みを感じることがあるだろう。しかし、このときでも鼻毛は鼻から入る空気の温度を抑え、湿度を上げて空気を鼻に入れてくれようとしているのだ。
「鼻毛のこうした機能があるからこそ、私たちは外気の暑さや寒さ、湿度に適応しながら呼吸をすることができているのです」
そしてもう一つのフィルター機能。
「呼吸によって鼻から入ってくる空気中のほこりやアレルゲンなどの汚れやゴミの8割は、鼻毛によって鼻孔のあたりで防ぐことができます」(今井先生)
空気が汚染されている場所に住んでいる人は鼻毛が伸びやすいといわれるが、これは体が防御のために起こす自然な反応だ。