「高温多湿のこの時季、気をつけたいのは『パンケーキ症候群』です。これは、パンケーキなどの粉ものを食べた後に起きる体調不良のこと。ひどい場合は呼吸困難や意識障害が起き、ときには命に関わることもあります。パンケーキ症候群と呼ばれていますが、パンケーキや小麦粉に罪はありません。症状の正体は、パンケーキミックスなど粉類の保存状態が悪く、ダニが繁殖し、それを食べることで引き起こされるアレルギー反応なんです」
このような“小麦ダニ”アレルギーに関して解説するのは、医療法人社団五良会 竹内内科小児科医院・院長の五藤良将さんだ。パンケーキミックスだけでなく、お好み焼き粉、たこ焼き粉など、身近な小麦粉製品を中心に注意が必要だという。
「ほかにも天ぷら粉、パン粉、ときにはプロテインの粉、調味料の残りなども、保存状態が悪ければダニが入り込んでしまい、袋や容器の中で繁殖する可能性はあります。ダニは湿度60~80%、気温25度以上で繁殖しやすくなるといわれています。この時期、開封した商品の口をしっかり閉めず、常温保存すればリスクが高まります」
■防ぐためには正しい保存とアレルギー検査を
しかも、ダニの大きさは0.1ミリから0.2ミリ以下程度。
「肉眼で確認することは難しいです。そして気づかずに熱を通して調理しても、ダニは死にますが、ダニの死骸にはアレルゲンは残ったままです。つまり、加熱調理してもアレルギーが引き起こされる可能性があるのです」
怖いのは、アレルギー体質の人。
「気管支喘息やアトピー性皮膚炎、ダニアレルギーがある人は要注意です。大人でも子どもでも、アレルゲンが体内に入ることで、内臓などにアレルギー反応を起こします。多くは食後30分以内に症状が出ます。軽度の症状であれば口の中のかゆみ、鼻水、くしゃみ、下痢、顔面紅潮、じんましんなどです。非常に確率は低いですが、重度となると血圧が下がり意識を失ったり、気管支炎のような喘息症状が出たり、最悪、アナフィラキシーショックを起こします。アナフィラキシー反応の初期症状には不安感やチクチクした感じと、めまいが起こります。重症化に伴い、症状がみるみる悪化して、全身にかゆみやじんましん、腫れが出たり、喘鳴や呼吸困難が起きたり、失神したりします。これらの症状は生命を脅かす状態まで急速に悪化する可能性があります。リスクが高い方には、ショックを防ぐための補助治療注射であるエピペンを常備しておくことも必要」
そのため、大事なのは予防だ。舌の下に薬を入れる「舌下免疫療法」を3年ほど続けて、少しずつアレルギー反応を緩和させる方法もあるが、まずやるべきは、ダニを繁殖させないこと。
「開封したパンケーキミックスなどは、袋にダニが入り込まないように口にあるチャックをしっかりと閉めて、冷蔵庫に保存しましょう。なるべく短期間で使い切り、長期間開封したままのものは廃棄しましょう」
また、ダニアレルギーの有無などを事前に知ることも重要だろう。
「アレルギー症状で心配なことがあれば、医療機関で血液検査をすることができます。3割負担で5000円ほどです」
粉ものをおいしく食べるため、正しい保存を心がけよう。