犬を飼っている人と猫を飼っている人とでは、認知症の発症リスクに差が出る。
こんな驚きの研究結果が東京都健康長寿医療センター・社会参加とヘルシーエイジング研究チームによって公表された。
早速この研究に携わった同センター協力研究員で国立環境研究所主任研究員の谷口優さんに聞いた。
「たしかに、犬を飼っている人は、飼っていない人に比べて、認知症が発症するリスクが40%低いことが、今回の研究で示されました」
この研究には2016年から2020年までの5年間で、東京都内での疫学調査に応答した65歳以上の男女約1万1千人の調査データを使用。
犬を飼っている人は飼っていない人より40%認知症発症リスクが減るのに対し、猫を飼っている人は飼っていない人と比べて2%しか認知症発症リスクが減らなかったのだという。
「今回の研究では、さらに犬を飼っている人のうち、定期的に運動する習慣がある人や、家族・友人などと対面や電話などで交流している人のほうが、認知症を発症するリスクが下がることもわかりました。
犬を飼えば、毎日の散歩が日課となります。また、その散歩中に出会う人とあいさつしたり、会話したりすることがコミュニケーションとなるでしょう。それらが認知症リスクを下げることにつながっているのではないかと思います」(谷口さん、以下同)
■散歩する習慣や人とつながる行動が重要
ここで、納得できない猫派の読者も多いのでは……。
「猫を飼うことで飼い主の心理的な側面によい影響を及ぼすことが報告されています。
猫がいることで“気分が安定する”ことは考えられますが、『猫の飼育が認知症リスクを軽減できる』とまでは言えないでしょう」
犬を飼うことによって機会が増える「散歩する習慣や、人とつながる行動」こそが認知症リスクを下げると谷口さんは強調する。
さらに関連する研究では、ペットの飼育をしている人は、飼育をしていない人に比べて「月額の介護費が約半分に抑えられる」という結果も出たそうだ。
超高齢社会に差し掛かり、医療・介護費の増大は国家の大問題となっているが、犬などペットの飼育がその是正に役立つのかもしれない。
「昨今は『飼育崩壊』が問題視され、高齢の方がペットを飼うことをネガティブに思われる風潮もあるかと思われます。
しかし、ペットがいることは、生きがいにもなりますし、認知症リスクの低減や介護費削減にもつながる。ご家族や地域で飼育をサポートする仕組み作りも必要ではないかと思っています」
飼っている犬や猫はもちろん、家族やご近所と向き合うことも、認知症予防には大切だ。