【事例一】
宮崎県日南市の70代の女性が、4月上旬に体調不良をうったえ4月6日に市内の医療機関に入院。しかし回復せず、7日に宮崎市保健所管内の医療機関に転院。9日には検査でSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の感染が判明したが、その後に死亡した。 この女性は発症前に、庭の手入れを行っており、ダニに噛まれた痕が確認された(4月19日、宮崎日日新聞より抜粋、以下同様)
【事例二】
北海道函館市の70代の男性が、5月下旬に山菜採りをした後、同月末に左手足のしびれが出た。6月24日、医師がダニ媒介脳炎を疑い、検査の結果、7月1日に感染判明。 男性は麻痺、意識障害、けいれん、髄膜炎、脳炎、筋力低下などの症状がみられ、入院治療中という(7月4日、朝日新聞デジタル)
【事例三】
広島県府中市の80代の女性が、マダニ類が感染源となる日本紅斑熱を発症し死亡。発熱などの症状が出る前には、農作業に従事しており、右脚にマダニの刺し口があったという(7月13日、中国新聞)
【事例四】
宮崎市の60代の女性が、発熱や吐き気などの症状で医療機関を受診。SFTS感染が判明し、後に死亡。ダニの刺し口は確認されておらず、感染経路は不明。ふだんの庭の手入れなどの際には、長袖・長ズボンを着用していたという(2023年7月7日、宮崎日日新聞)
これらの事例は、いずれもダニ媒介感染症による事例だ。
この感染症は、なんらかの病原体を保有するマダニやつつが虫に刺されることによって起こるもので、近年、増加傾向にあるといわれている。
温暖化、過疎・高齢化での狩猟者の減少、人工林の増加などの理由から、ダニが寄生する野生動物が山から下りて人の居住域に出没していることで、ダニ媒介感染症の報告が増加しているとも考えられる。
マダニ(約0.5~1.5cm)は肉眼で見える大きさだが、ツツガムシ(約0.3~0.5mm)は肉眼ではほとんど見えない。
国際医療福祉大学成田病院感染症科部長の加藤康幸先生が、次のように解説する。
「ダニ媒介感染症にはいくつかの種類があります。SFTS、日本紅斑熱、ライム病、つつが虫病、ダニ媒介脳炎などが日本でも報告されています」