■低・中所得者層の負担を大幅に増やす可能性が
問題なのは、一連の自己負担限度額の引き上げによって、「もっともダメージを受けるのがボリュームゾーンである現役世代の“低・中所得者層”(年収約260万~約770万円)だ」
と指摘するのは、全国保険医団体連合会、事務局次長の本並省吾さん。こう続ける。
「石破首相は1月24日の施政方針演説で、『高額療養費の見直しなどで社会保険料負担の抑制につなげる』などと、いかにも現役世代の負担を減らすかのように述べましたが、実際はちがいます」
70歳未満の現役世代で見ると、公的医療保険の加入者9,640万人のうち、年収が770万円以下の低・中所得者層が8,720万人と8割以上を占める。
また、高額療養費を年1回以上利用している400万人のうち、9割以上を占めるのも低・中所得者層だ。
そもそも高所得者の場合、上限額も高いため利用対象から外れることが多いのだという。
つまり、自己負担限度額の引き上げは「現役世代の負担を減らす」どころか、ボリュームゾーンである現役低・中所得者層の負担を大幅に増やす可能性があるわけだ。
「2人に1人ががんに罹患し、3人に1人ががんで亡くなる時代。国民を不安にさせる自己負担額引き上げは、将来不安を助長するものでしかありません」(本並さん)
前出の天野さんは、「まず、高額療養費制度を利用している患者の実状を石破首相に知ってほしい」として働きかけを続けている……。
こうした、がん患者らの反発の声を聞いてか、政府は今夏から自己負担の上限を引き上げる方針を見なす方向で調整に入った。
石破首相が掲げる「楽しい日本」が「地獄の日本」とならないよう期待したい。
