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最盛期には16本もレギュラーを抱え“日本一忙しい司会者”と言われたタレントのみのもんたさんが3月1日未明に亡くなった。80歳だった。

 

「今年1月16日に知人らとの会食で訪れた高級焼き肉店で、みのさんは、牛タンをほぼかまずに飲み込んでのどを詰まらせました。知人が背中をさすったりしましたが、息ができないまま苦しそうにしていたため救急搬送。一時は心肺停止状態に。その後、治療を受けていましたが残念ながら、45日後に息を引き取りました」(スポーツ紙芸能記者)

 

2019年に難病のパーキンソン病を患っていることを公表。2020年には引退したが、引退後もおしゃべり好きは変わっていなかった。軽妙な語り口を生み出したのどで一時代を築いたみのさんが、のどを詰まらせたことが原因で亡くなられた。なんという因果だろうか。

 

■中高年だけでも年間、4,600人以上が食事中に窒息死している

 

高齢者が食べ物をのどに詰まらせて命を落とすケースは少なくない。厚生労働省の「人口動態調査」によると、2022年の不慮の事故による死因のうち〈気道閉塞を生じた食物の〉による死亡者数は4,696人。80歳以上が7割近くで3,145人が食物をのどに詰まらせて窒息により亡くなっている。

 

高齢者の窒息というと、正月に餅を食べたことによる事故が多い印象があるが、牛タンなどほかの食物でも詰まることが多い。

 

「餅に限らず、食パン(とくにパンの耳)やおすしなどのごはん粒、かみ切りにくい肉やタコ、滑ってのどに行きやすいアメやこんにゃくゼリーなどの食べ物でも窒息事故は起こります。とくにひと塊で粘り気がある食べ物はのどに詰まりやすくなります。食品を詰まらせ、気道が塞がった状態が3分以上続くと死に至る率が高くなります」(東京消防庁救急救命士)

 

■50歳を過ぎると自覚がないままに“飲み込む力”がみるみる衰える

 

高齢者に窒息事故が多い背景を神鋼記念病院耳鼻咽喉科医長の浦長瀬昌宏先生が解説する。

 

「異物(食べ物)が気管に入ってしまい呼吸できなくなる窒息は“飲み込む力”が弱くなることが原因。本来であれば、後、舌を使ってのどに送り込まれた食べ物は、飲み込む瞬間、のど仏(喉頭)が上に動くことで、食道に送り込まれます。この動きによって、食道の入り口が開き、空気の通り道をふさぐ喉頭蓋が倒れ、食べ物が気管に入り込まないようにしています。

 

窒息事故は、のど仏が上がるのが遅れたり、上がり方が弱くなったりすることで起きます」

 

飲み込む力の低下は、おもに加齢によってのどや舌の筋肉、のど仏やの感覚が衰えることで起こるという。気がかりなのが、機能の低下は自覚しないうちに進んでいくということだ。

 

「多くの高齢者が“飲み込む力”が低下していることに気がついていません。今まで問題なかったからと油断して、一口量を多くしたり、咀嚼が不十分なまま飲み込んでしまうのです」(浦長瀬先生)

 

さらに気になることがある。窒息死亡件数のグラフをもう1度見てほしい。45~64歳でも341人が亡くなっているのだ。

 

「“飲み込む力”は高齢にならないと低下しないという思い込みがあり、自分は関係ないと思っている人が多くいますが、のどの筋肉が衰えはじめるのは40代後半から。気づかないうちに嚥下機能が低下している人も少なくありません。飲み込むという動作は、ふだん意識することがないので見落とされているケースが多いのです」

 

“飲み込む力”の低下は加齢だけが原因ではない。みのさんが患っていたパーキンソン病など筋肉や神経の病気も嚥下機能を低下させることがわかっている。また薬の影響も飲み込みがうまくいかなくなる原因になるという。

 

「中高年から服用する機会が増える降圧剤の、カルシウム薬は筋肉を緩める作用があり、舌やのどの筋肉もさせ、飲み込む力を下げます。また利尿薬は唾液の分泌を抑えるため、嚥下に影響することも。たとえば、服用している薬が飲み込みづらい、のどに張り付いた感覚がある場合は、飲み込む力が低下している可能性があるでしょう」(浦長瀬先生)

 

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