■金属アレルギーを持っている人のほうが黄砂によるトラブルが出やすい
黄砂に詳しい聖路加国際大学大学院・公衆衛生学研究科准教授の大西一成さんは、こう指摘する。
「症状には個人差があるので一概に『この症状は黄砂の影響』とは言えません。
ただ、花粉症のアレルギー検査をして陰性なのに、黄砂が飛来しているときに鼻水や目のかゆみ、喉の痛みや咳、肌の炎症といった症状が出ている場合は、黄砂による影響の可能性が大きいです」
また、金属アレルギーを持っている人のほうが、黄砂による皮膚トラブルが出やすいという傾向も。
「黄砂には、さまざまな金属成分が絡まっています。私たちの研究では、黄砂のときに湿疹やかゆみなど、肌トラブルを感じた方の9割がニッケルという金属のアレルギーを持っていたことがわかっています」(大西さん)
加えて前出の伊藤さんは、臨床の経験から、「花粉より黄砂のほうが鼻や喉の炎症などがひどくなりやすい傾向にある」として、黄砂特有の特徴を、こう解説する。
「髪の毛の断面が70マイクロメートルとすると、スギ花粉の粒子は20~40マイクロメートル、黄砂はマイクロメートルと、かなり小さいため、気道の奥まで入りやすい。加えて、黄砂は鉱物が絡まっていて硬いので、吸い込んだときに粘膜を傷つけてしまいます。その結果、花粉症よりも喉や鼻の炎症がひどくなり、粘膜が腫れてぜんそくのような症状が出る方もいます」
■黄砂が飛来したあとに、急性心筋梗塞の患者が増えるとの報告も
軽度ですめばよいが、命にかかわる大病の引き金になることも。
「2017年には熊本大学などの共同研究により、黄砂が飛来したあとに、急性心筋梗塞の患者が増える可能性があると報告されています。
生活習慣病などの既往歴がある方はもちろん、高齢者は影響を受けやすいです。そうでない方でも、黄砂が飛来するたびに吸い込んでいると、ダメージが積み重なって、発症につながる可能性もあるので注意が必要です」(大西さん)
