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参議院選挙の投票日まで1週間を切った。都知事選挙の陰で、参院選は盛り上がりに欠ける印象だが、国の在り方を問う大切な選挙だ。

 

「自民党は選挙公約などで、アベノミクスの成果を強調しています。ただ問題はその中身。安倍政権の発足当時と比べると、非正規社員が172万人増え、正社員が23万人減っています(’12年・’15年総務省労働力調査)。物事のよい側面だけが喧伝されがちですから、注意が必要です」

 

こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。また、今年前半を振り返ると、明るい施策が続いた。消費税増税の先送りや、低所得の高齢者に「臨時福祉給付金」3万円、低所得の新婚家庭に「結婚新生活支援事業費補助金」18万円など。これらは一見、国民にやさしい施策だが、実際は「アメ政策」でしかないという。

 

借金が1,000兆円といわれる国のバラマキは、必ずツケが回ってくる。そんな、選挙後に私たちを襲うであろう8つの「ムチ政策」を荻原さんが解説。

 

【1】GPIF運用実績

「GPIFとは、私たちが納める公的年金の保険料を預かって運用する『年金積立金管理運用独立行政法人』です。毎年、7月上旬に前年度の運用実績を発表しますが、今年は7月29日になりました。実は、’15年実績は5兆円もの損失が出るといわれていて、発表の延期は、参院選への影響を考えた損失隠しではと、批判されています。年金の減少は、受給年齢の67歳への引き上げや支給額カット、保険料アップへと進むでしょう」

 

【2】株価対策は打ち止めか?

「今年初め1万8,000円台だった株価は、世界的な株安の進行とイギリスのEU離脱決定などを受け、一時は1万5,000円を下回りました。株価連動内閣といわれた安倍政権ですから、参院選までは、すくなくとも現状維持に努めると思いますが、さらに外国人投資家の株売りが進むと、GPIFの損失などがもっと膨らむことも考えられます」

 

【3】第三のビールが増税に

「ビール類にかかる税金は今、350ml缶で、ビールは77円、発泡酒が47円、第三のビールが28円とバラバラです。これを一律55円にしようという論議がありましたが、去年は軽減税率問題に時間を費やしたため、見送られました。今年は参院選後に論議が始まり、早ければ、年末に発表される税制改正大綱に盛り込まれるでしょう。来年度からの実施もありえます」

 

【4】配偶者控除の撤廃

「配偶者控除は、妻が年収103万円以下で働くとき、夫の収入から一定額が差し引かれ、夫の税金が安くなるものです。所得税率は収入によりますが、税率10%の方なら所得税が3万8,000円減額されます。また、住民税でも3万3,000円の減額ですが、配偶者控除が撤廃されると、その分、税負担が増えます(妻が働く専業主夫家庭でも同様)」

 

【5】高齢者の高額療養費制度

「70歳未満、現役世代の高額療養費制度は、去年から、高収入の方の負担が以前より重くなりました。社会保障費の増加は深刻ですから、自己負担の引き上げが、高収入層から平均的な収入層へと広がる危険性を忘れないことです」

 

【6】高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ法案)

「現在の労働基準法では、1日8時間、週40時間を超えて働く場合は、残業代を払うことが義務付けられています。これを年収1,075万円以上で、コンサルタントや金融アナリストなど一部の職業に限っては、働いた時間ではなく成果で報酬を決める『高度プロフェッショナル制度』に変えようとする動きがあります。ですが将来的に、年収制限が引き下げられ、対象者が増える危険性は否めません」

 

【7】年金のマクロ経済スライドがデフレ下でも発動?

「年金はこれまで物価に合わせて、たとえば、物価が1%上昇すれば年金支給額も1%上がってきました。ところが、少子高齢化で年金の支え手が減少し、年金財政が困窮。’04年にマクロ経済スライドが導入されました。たとえば物価が2%上昇しても調整分を差し引いて、年金支給額は1.1%アップにとどめるというものです。現在は、物価上昇時に限られますが、今後は、物価が下がるデフレ時の発動も議論が活発になるでしょう」

 

【8】憲法改正

「この参院選の最大の争点でありながら、自民党がもっとも争点化したくなかったのが憲法改正問題です。憲法改正には、衆議院と参議院それぞれで3分の2以上の賛成を得て、国民投票にかけます。現在、衆議院では自民・公明両党で3分の2以上の議席がありますから、与党にとって参院選が正念場です。与党が3分の2を超える議席を獲得すれば、憲法改正も、これまで見てきたムチ政策も、思いのままに進めるでしょう。だからこそよく考えて、あなたの一票を投じましょう」

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