「国民健康保険は、大企業の健康保険や中小企業の協会けんぽなどと比べて、保険料負担が大きいことはよく知られています。ところが、同じ国民健康保険でも、地域によって保険料に格差があることをご存じの方は、少ないのではないでしょうか」
こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。国民健康保険の運営主体は市町村など自治体。徴収する保険料も自治体が独自で決めているため、自治体の事情により格差が生じるという。実際、どれほどの違いがあるのか、荻原さんが解説してくれた。
「朝日新聞の調査(’16年7月・全国68市区を対象)によると、世帯主の年収が400万円、40代の主婦と子ども2人の4人家族で、保険料がもっとも安いのは岐阜市で、年約35万7,000円でした。いっぽう、もっとも高いのは山口県下関市の年約59万2,000円。この2市には約1.7倍の格差があります。差額は年約23万5,000円で、月々約2万円。家計にとっては、かなり大きいものだと思います」
格差の原因となる自治体の事情とは何なのか?
「たとえば、加入者に高齢者が多い自治体は、医療費がかさむことが多く、保険料を高くする傾向があります。また、高収入の方が多い自治体は、収入に応じて徴収する保険料が多く集まるため、相対的に保険料水準が低く抑えられることもあります。つまり、加入者の年齢構成や収入などによって格差が生まれるのです」
地域格差が生じる国民健康保険を、安く抑える方法はないのだろうか。そこで、荻原さんが3つの節約術を教えてくれた。
【1】世帯をまとめる
「二世帯住宅で暮らす方で、別世帯として国民健康保険に加入している方は、2つの世帯を1つにまとめると保険料が安くなることがあります」
【2】会社員時代の健康保険の任意継続
「会社を退職すると国民健康保険に移らねばなりませんが、2年間だけそのままの健康保険を任意継続することができます。これまで会社と折半で支払っていた保険料が全額自己負担になりますから、保険料は2倍必要ですが、国民健康保険より安くなる自治体もあります」
【3】保険料の安い自治体に引っ越す
「先の朝日新聞の調査によると、兵庫県の尼崎市は年間保険料が約56万円と、68市区中ワースト4位の高さです。近隣の神戸市に引っ越すと、年間保険料が約42万4,000円になり、年約13万6,000円も節約できます」
国民健康保険は’18年度に、運営主体を今の自治体から都道府県に移すことが決まっている。この改革で今ある格差がどう変わるのか、私たちの負担は軽減するのか、注目していきたい。