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「先月、大阪地方裁判所は、ペットが暴走し通行人にけがを負わせたとして、飼い主に約1,280万円もの賠償金支払いを命じました。ペットは小型犬のミニチュアダックスフントです。散歩中に通りかかった柴犬に反応して暴走し、飼い主は思わず、リードを手放してしまいました。被害者はランニング中でしたが、飛び出してきた犬に驚いて側溝に転倒し、手首を骨折。10カ月通院し、今も手首が動かしにくい後遺症が残っているといいます」

 

こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。犬が人に危害を加える事件は、たびたび起こっている。特に、かみつき事件は減少傾向とはいうものの、’15年度にも4,341件起きて、5人が死亡している(環境省)。

 

「昨年3月、祖父母宅で生後10か月の孫が、飼い犬のゴールデンレトリーバーにかまれて亡くなった痛ましい事件を覚えている方もいるでしょう。私も柴犬を飼っていますから、人ごとではありません。ペットが起こした事件は、民法で『相当の注意を払っていない限り、飼い主が賠償の責任を負う』と規定されています。飼い主は小型犬やおとなしい犬種でも油断せず、十分に注意しなければなりません」

 

とはいえ、どんなに注意しても不測の事態を招くことはあるので、備えがあると安心だ。ペットに関する備えとして、まず思い浮かぶのは、「ペット保険」だろう。荻原さんが解説してくれた。

 

「ペット保険とは、ペットが病院にかかったときの費用の一部を補償してくれるものです。これに『ペット賠償責任特約』を付帯していれば、ペットが他人に傷を負わせたときや物を壊してしまったときの賠償金を補償してくれます」

 

ただ、ペット保険の保険料は高いものが多い。保険料はペットの年齢と犬種などによるが、アイペット損保のペット保険「うちの子」の病院代を50%補償してくれるプランで、保険料を見てみよう(1年一括払い)。

 

「1歳では、小型犬だと2万6,820円、大型犬だと4万1,340円です。ところが年齢とともに保険料が上がり、病院通いが多くなる高齢になると、12歳の保険料は、小型犬が8万2,260円、大型犬では14万8,110円となります。こうしたこともあり、ペット保険の加入率は、10%に満たないといわれています。また、ペット賠償責任特約は賠償金の上限が500万円か1,000万円と設定されているものがほとんどです。冒頭の賠償額だと不足が生じます」

 

では、ペット賠償責任特約以外に、備えとなるものはないのだろうか。

 

「実は、『個人賠償責任保険』でカバーできます。個人賠償責任保険とは、他人に損害を与えたときに、賠償金を補償してくれるものです。これは、ペットが他人や物に損害を与えたときだけでなく、自転車事故を起こし他人を傷つけた、買い物中に店の商品を壊した、子どもが遊んでいて近所の窓ガラスを割った、洗濯機が壊れて階下の住宅に水漏れを起こしてしまったなど、身の回りの多くのトラブルに対応できます」

 

個人賠償責任保険は、通常、自動車保険や火災保険、損害保険などに「個人賠償責任特約」として付帯するもので、多くの人がすでに加入していると思われる。

 

「特約料は、月100〜200円程度で、ペット賠償責任特約も変わりありません。賠償金は個人賠償責任特約の場合、1億円までの補償が一般的です。冒頭の事件もそうですが、自転車事故などでの賠償も高額になっていますから、賠償金上限は高いほうが安心でしょう」

 

「これだけの補償が、安い特約料で付帯できるのはお得だ」と感じる人もいるかもしれない。しかし、特約料が安いのは、そうした事態に陥る人が少ないということ。誰にでも起こりうるトラブルだが、実際に遭遇する人は相当まれだといえる。

 

「さらに、補償の対象は保険の契約者だけでなく、家族全員に及びますから、この特約は1つあれば十分です。たとえば火災保険とペット保険など、重ねて付帯する必要はありません。この機会に、個人賠償責任特約に加入済みか、どの保険に付帯しているのか、賠償金の上限金額はいくらかなどを確認しておきましょう。注意と備えを万全にして、ペットとの生活を楽しみたいものです」

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