「心を動かされたときに流す涙を『情動の涙』といいます。これは人間だけに備わる特別の機能です。感動の涙を流すことで緊張やストレスに関係する交感神経から、脳がリラックスした状態の副交感神経へとスイッチが切り替わります。たくさん涙を流すほど、ストレスが解消し、心の混乱や怒り、悲しみが改善されます」
そう話すのは、東邦大学名誉教授で脳生理学者・医師の有田秀穂先生。涙を流すことは、ストレス解消に大きな効果があるという。そこで、赤ちゃんから100歳の方まで楽しめる、“泣ける”絵本をクレヨンハウス・子どもの本事業部の若林桜さんに教えてもらった。
『アンジュール ある犬の物語』ガブリエル バンサン作(BL出版)
「ある日車の窓から突然捨てられた犬が、さまよい、新たな出会いを見つけるまでの物語。背景などを極限までそぎ落としたデッサン画に言葉はありませんが、犬の孤独や悲しみがひしひしと胸に迫ります」(若林さん・以下同)
『100万回生きたねこ』佐野洋子作・絵(講談社)
「何度も転生し、どんな飼い主に愛されようとも、その死を悲しまれようとも、誰も愛さず、自分自身にしか愛情を注げない猫。そんな彼が、100万回目の人生ではじめて愛する人の死という衝撃に向かい合います」
『だいじょうぶだいじょうぶ』いとうひろし作・絵(講談社)
「ひとつのことばが明日を迎える勇気をくれる。そんな力を持ったことば『だいじょうぶ だいじょうぶ』がおじいちゃんから孫へと、手のぬくもりとともに伝えられていく」
『ねこのチャッピー』ささめやゆき文・絵(小峰書店)
「猫のチャッピーが家族になった日からつづられた彼女のいる何げない日常。淡々とした語り口だからこそ、作者のチャッピーへの思いが心に染み込んできます」
『わすれられないおくりもの』スーザン バーレイ作・絵/小川仁央訳(評論社)
「年老いたアナグマを失った悲しみを、森の動物たちはどのようにして克服していくのか。読み進めるうちにあたたかな気持ちになり、希望すら湧いてきます」
『ルリユールおじさん』いせひでこ作(講談社)
「パリの路地裏で、一冊の図鑑をきっかけに出会った製本職人の老人と少女。美しい絵と素敵な物語を読み進めるうち、最後の1ページで心をぐっとつかまれます」
『こんとあき』林明子作(福音館書店)
「キツネのぬいぐるみのこんは、あきが生まれたときから彼女を見守ってきました。どんな場面でもあきを守ろうとするこんの姿に胸が熱くなります」
『花さき山』斎藤隆介作・滝平二郎絵(岩崎書店)
「自分のことよりも人のことを思って何かをしたとき、山奥でひっそりと美しい花が咲くという。つらいとき、ふと『今、あの山では花が咲いたのだろうか』と思いをはせることで、報われる気がします」