「土地の名産や郷土料理を手軽に食べられるのが“ご当地缶詰”のいいところです」

 

と言うのは、『日本全国「ローカル缶詰」驚きの逸品36』の著者で、子供のころから缶詰が大好きだという缶詰博士・黒川勇人さん(47)。いままでに食べた1000種類以上の缶詰から、味の冒険が楽しめるおすすめの缶詰を教えてくれた。まずは、地元ならではの郷土料理が詰まった缶から。

 

「ウニとアワビの潮汁、青森県の『いちご煮』(味の加久の屋)は、ウニに含まれるアミノ酸と、アワビに含まれるコハク酸のうま味をだし汁で引き出しているんです。味を再現するのに3年もかかったそう。製粉する技術がなかった時代からある、皮をむいたそばの実をゆでてそのまま食べる『むきそば』(梅田食品製造本舗)は、山形県の郷土料理。これはそば好きの人にもあまり知られていない珍しいものです。セットで付く“そばたれ”も絶妙」

 

絶品缶詰なら、汁ごと使って炊き込みご飯や雑炊などのアレンジも可能。そんなとっておきの“ひと手間”も教えてもらった。

 

「サケでいうとハラスのような脂ののった部分を使っている宮城県『鯨須の子大和煮』(木の屋石巻水産)。汁を切ってお皿に盛り付け、白髪ねぎをのせる。食べる直前に、たっぷりのごま油と白ごまをパラッとかけてみてください。フレッシュな香りが食欲をそそります。

単純ですが温めることも重要です。『愛媛の無塩せきコンビーフ』(創健社)は、長時間かけて煮込んだ牛肉のような深い味わいになりますし、秋田県『こまちがゆ』(こまち食品工業)をアツアツにすると、まるで高級ホテルの朝食を食べているよう、いや、それ以上かもしれません」

 

缶詰は“安く買えるもの”というイメージがあるが、高級食材にさらに手をかけたグルメ商品も。

 

「大分県『さざえ味付缶詰』(太田缶詰工場)は4,200円。製造を始めて100年以上、ゆで上げたサザエの内臓部分をひとつひとつ、手で取り除いているんです。内臓ごと使うと味がくすんでしまうのだとか。缶ごと使って炊き込みご飯にしたときにできる、おこげも最高!

蒸したウニがぜいたくに入っている福島県『うに缶』(大川魚店)は、生ウニよりも味がぎゅっと凝縮されていて濃厚。昔から浜の人がウニを蒸し焼きにして食べていた土地ならではです」

 

まだまだたくさんあるのだが……。黒川さんは“快缶”を求め続けるという。「缶詰は、フタを開けるまで何が出てくるかわからない。宝箱のようなものですから」

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