下重暁子(以下・下重)「私は小3のころから、『一生自分で自分を養っていく』という覚悟で生活してきました。自分自身はいまもその思いで働き続けていますが、昨今、老後のお金についての会話となると、誰もが介護の不安を口にします」

 

荻原博子(以下・荻原)「現在、老後を迎えようとしているみなさんは、介護保険のなかった親世代を判断材料にしているんですね。ですから生命保険文化センターというところのアンケートでは、介護にどのくらいかかると思うかという問いに、『夫婦2人で約6,000万円』という回答になっている。でも、現実はずいぶん違うんです」

 

作家の下重暁子さん(82)と経済ジャーナリストの荻原博子さん(64)。それぞれ『極上の孤独』と『老前破産』など生き方の指針となる著書も多い。そんな2人が、夫婦で不安のない老後にするための対処法を語り合ってくれた。

 

荻原「実際に介護をしている方にかかった費用を調査すると老後で『1人平均550万円』です。介護保険では、普通の年金生活者の場合は1割負担ですから。2人では1,100万円で、そこに医療費その他を入れて、だいたい1,500万円あれば、老後はなんとかやっていけるでしょう。現実に即した対処をするためにも、ふだんから夫婦で話しておくことが肝心と思いますが、最近わかったのは、お金の話ができていない夫婦が多いこと」

 

下重「お金は夫が会社で猛烈に働いて、家庭は妻が守るという役割分担になっているんですね。それでは、お金の話に限らず、夫婦の会話は成り立ちません」

 

荻原「たしかに老後になると夫婦2人の生活ですから、お金のことも、どちらかの役割ではなく、2人で考えなくてはいけません」

 

下重「うちの夫婦は、マンションを購入した際も折半にして、自由業でまとまった収入のある私が頭金を半分出して、残り半分の支払いは、勤め人でローンも組めるつれあいが毎月やっていました。だいたい、老後に借金を残しちゃダメですよ。それこそ不安の種です。定年まで、つまりは定収入がなくなるまでに借金も返しておくべき」

 

荻原「そのためにも、まずは夫婦で資産を見直して、貯金やローンなどを書き出してみる。すると借金の総額が明確になり、将来プランも見えてきます」

 

夫婦の形はそれぞれだが、一般には、妻が夫に先立たれ、1人での生活をスタートさせる場合がほとんどだ。

 

荻原「夫の死後は、家のローンが終わっていれば家賃もなく住み続けられるわけですし、妻には遺族年金と貯金などがあれば、生活はひとまず成り立つと思います。そこで始まるのが、夫の残した蔵書やCDなどの処分。自分にとっては不要なものですけれど、燃やしたり捨てるのはしのびないという人が本当に多いですね」

 

下重「私は、断捨離という風潮もありますが、なんでも捨てる必要はないという考えです。亡くなった父や母が使っていた道具一式は、軽井沢に執筆のために買った山荘に、そのまま持って行きました。ボロボロのソファも修繕して運びました。好きなものだけを選んで長く使うのがいいですね」

 

荻原「下重さん自身の蔵書も、相当な量になるのでは」

 

下重「北海道の図書館に寄贈することも考えました。しかし、どうしても必要だったり大切な本は手元に置いておきたくて、このプランは断念しました。いただく本も多いのですが、私は物書きですから、それを書いた人の苦労を思うと、簡単には捨てられないんですねえ。父の絵などもいまは飾っていますが、私が死んだあとは、これはもう悩んでもしょうがない。まあ、つれあいは、私の父への思いを知っているので、簡単には処分しないでしょうけれど。つまりは“思い”。思いが込められているものは、簡単には捨ててはいけないんです」

 

荻原「私なら、夫の趣味の遺品はバザーに出します。好きな人に引き継いでもらえるだろうし、少額でもお金にもなります」