「夫がある日突然、事故や病気で亡くなったらどうしよう」と、不安に思う妻は多い。夫の死後、喪主として葬儀を仕切り、身の回りの物を処分したり、手続きをしたりと、やることがたくさんある。その間、食べていかなければならないので、悲しんでばかりもいられないのが本音だろう。
「何から手をつけていいのかわからない、という声をよく聞きます。お葬式でかかった費用の清算、扶養されていれば年金の手続き、健康保険の名義変更、預貯金、民間の保険の解約の手続きなどをしますが、国や勤め先などから、もらえるお金があるのを知らないで、余計なお金を使うケースを見かけます。手続きがスムーズにできるように事前に知っておきましょう」
そうアドバイスするのは、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さん。「夫が死んだらもらえるお金」全リストは次のとおりだ。
【1】制度=埋葬料/手続き先=健康保険/受給要件、対象=葬儀を行った人に対して支払われる。
【2】制度=葬祭費/手続き先=国民健康保険/受給要件、対象=葬儀を行った人に対して支払われる。
【3】制度=遺族基礎年金/手続き先=国民年金/受給要件、対象=18歳未満の子どもがいる配偶者と子ども。
【4】制度=遺族厚生年金/手続き先=厚生年金/受給要件、対象=年収が850万円未満の妻、子など。
【5】制度=寡婦年金/手続き先=国民年金/受給要件、対象=妻が60~64歳の期間受け取れる。
【6】制度=死亡退職金・弔慰金/手続き先=会社、勤務先/勤務してきた功労に対して支払われる。弔慰を示して支払われる。
【7】制度=遺族補償給付/手続き先=労働基準監督署/受給要件、対象=仕事中に事故や病気で死んだら支払われる。
【8】制度=死亡保険金・入院給付金/手続き先=民間の生命保険/受給要件、対象=入院日数などに応じて支払われる。
そして大事なのは、夫が死んでから月々の収入がどのくらい少なくなるのか把握すること。夫が亡くなってから月々の生活費はどうなるのか? 「入るお金(遺族年金・妻の収入)」-「衣食住、水道光熱費など」=「足りない分」で書き出してみよう。
「入るお金」は、「夫が死んだらもらえるお金リストの3~5で計算した遺族年金の金額。そして、妻がパートに出ていたら月々の給料があてはまる。次に「衣食住、水道光熱費」など、出ていくお金をチェックしよう。
「月々の生活費が足りない」という場合に備えて、「収入保障保険」に加入しておく方法がある。収入保障保険とは、働き手が亡くなったときに、保険金額が毎月の収入のように、一定額入ってくる保険のこと。
たとえば、自営業の夫が50歳で亡くなった場合、高校を卒業するまでの子どもが2人いると、遺族基礎年金が年間で122万7,900円もらえることになるが、1カ月の生活費が夫の死後、25万円かかるとしたら、約15万円不足する。それを保険で補うというもの。
「夫が50歳のときに保険期間15年の契約をしておいて、仮に夫がすぐに亡くなったケースを計算してみますと、妻は1カ月15万円が15年分、トータルで2,700万円受け取れます。それくらいの保険に入っておくと安心ということになります。これが死亡保障の最高額で、保険期間の満了まで、契約後、夫の死亡まで1カ月経過するごとに、15万円ずつ受取総額が減っていく仕組みになっています」
夫が亡くなったら、どれくらい生活費が不足するのかシミュレーションして、必要な額、期間の保険の契約を検討しておこう。
保険料は会社によって異なるが、50歳で契約した場合の保険料は、1カ月6,500~8,000円程度。1年以上たばこを吸わない、肥満度を測るBMI値が18以上27以下など、健康体であれば、保険料はさらに安くなるという。
さらに、夫名義の預貯金や生命保険、死亡退職金で手元に残るお金を算出し、葬儀関係の支出や子どもが大学卒業をするまでの学費など、これからかかる大きな支出を差し引き、「不足分」が出てきたら掛け捨ての「定期保険」でカバーしよう。
「たとえば、10年間の保険期間で死亡保険金を500万円程度に設定すれば、月々の保険料は50歳で加入しても1カ月3,000~5,000円程度で済みます」
このように、突然夫が亡くなったとしても、少しの保険料で備えておけば十分生活は成り立つことがわかる。月々もらえるお金と、月々出ていくお金。死亡退職金や預貯金から葬儀代や子どもの学費などの大きな支出を引くというように、分けて計算すると、パニックにならない。
今からさっそく準備に取りかかろう!