いくつになっても変わらない特別な関係、“母と娘”。そのカタチは人それぞれで、なかにはその絆を断つという選択をしたことで、新しい自分に出会えたという人も。そんな「きれいごとでは終わらない母娘の関係」について、実母との確執を描いた漫画『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)の著者・田房永子さん(40)が、こんな提言を――。
■“母から自立したとき”に、自分の人生が始まります
あなたが今、母親との関係でどうしようもなく苦しんでいるなら、まずは親と離れること。家を出る、連絡を取らない、同居ならなるべく話さないなど、物理的、心理的に1人になることが大事です。
私自身、母と離れて「恨み切る」作業に8年近くかかりました。その間は、あえて恨むことを前提にした生活を心がけ、自分の気持ちを折にふれて自由に吐き出しました。実は最後には恨むことに飽きたほど。
それをしないで、「親を恨むなんて、私はそんな汚ない気持ちを持つ人間じゃない」と感情を抑えていると、今度は夫やパートナー、子どもなど周囲の人に(母親の代わりに)ぶつけてしまいがちです。
相手が毒母であれ、恨むという作業は苦しいと思います。そんなとき、同じ境遇の仲間との出会いが、大きな支えとなります。
自分と同じ段階の人とならば、「飽きたよね」とうなずき合えますし、まさに苦しんでいる最中でも、苦しみから脱している段階の人に会うことで、「いつまで苦しめばいいんだ」という悩みが和らいだりすることもあります。
私の場合は、『母がしんどい』を発表したことで、自然に反響というかたちで多くの出会いを持てましたが、「毒母」「毒親」をテーマにしたセミナーやイベントに参加すれば、仲間は必ずいます。
私もいまだにセミナーなどにも参加しますし、子育ての中で自分が過剰になりかけていると思ったときはセラピーも受けます。
漫画にも登場する’12年春の長女“Nちゃん”に続いて、昨春に息子“Yくん”を産みました。実は母を恨み切ったと思えた時期が、その長男の出産と重なるんです。
長女を産んだときには、「私もお母さんのようになるのでは」との強い恐怖がありました。しかし今、頼りになる夫と共に、実家とは違う構成の家庭を築いて、自分は自分と思えた。同時にふだんから、母親として「ふんばり力」をつける生活も心がけています。
親と距離を置くことに、抵抗や不安を持つのは当たり前です。しかし、大切なのは、距離を置くことで、その間に自分自身の傷を癒して心身を回復させること。
だから、強くなる必要もない。毒母からの自立というと、前向きで闘う印象を抱くかもしれませんが、むしろ「避難」や「リハビリ」をイメージすると楽かも。私も、そうして乗り越えました。