「9月1日は防災の日。コロナ禍で自粛生活を経験した今こそ、災害時に命を守る食の備蓄について考えてみませんか?」
そう語るのは、主婦の視点での防災対策を提唱する危機管理アドバイザーの国崎信江さん。
「非常食=特別な食ではありません。『ステイホーム』の際に、多めの食料をスーパーで買いましたよね? この“多めに買う習慣”はそのまま災害への備えになるんです」
日々のスーパーでの買い物が、そのまま非常食になると国崎さん。
「まず家に食材が何日分あるかを確認しましょう。冷蔵庫の中身を全部食べると3日分はありませんか? さらにお米や麺類、缶詰、レトルト食品など常温保存している家の中の食料すべてで7日分くらいになるのではないでしょうか?」
たしかに、今、家にある食料だけで10日分くらいはあるかもしれない。
「『非常食は10日分備蓄してください』というと、皆さん、難しそうな顔をされます。でも、毎日のスーパーの買い物で、すでに準備できているご家庭も多いんですよ」と国崎さん。
「日ごろから、食料を多く備えておき、それをふだん食べて消費しながら、買い足していくことで、一定の量の食料がいつも家に備蓄されているようにしましょう」
主婦で3人の子どもの母でもある国崎さんは、「家庭内流通備蓄」として、こう提唱した。この考え方は、現在「ローリングストック」と呼ばれ、広く普及している。
「アルファ米や缶パンなどのいわゆる“非常食”は、費用の面でも割高ですし、栄養の偏りや、賞味期限の管理も負担になります。一方、日ごろから食べるものを多めに買い、消費したら買い足す、という方法なら、賞味期限もこまめにチェックできますし、ふだんから栄養バランスに気を配れば、災害時の健康管理にもつながります。食べ慣れた味は、災害時のストレスを軽減する効果も」
何より、特別なことをするのではなく、スーパーでの買い物という日常の中で、非常時への備えができるのだという。
「私もふだんの生活でローリングストックを行っています。非常食は、ふだん買い物に行くスーパーで少し多めに買う。これで十分そろいます」
そう笑顔で話すのは、主婦の目線で防災情報を発信するサイト「いつもしも」のママさんライターであるトコさんだ。災害時には、栄養不足、精神的ストレス、衛生環境の悪化など、健康を悪化させる要因が増加する。だからこそ、自分で備えられる食料で、「栄養」面を対策したいもの。
トコさんは、ふだんスーパーの売場を回るときに「これは○○と一緒に使うと災害時の食になりそう」と、脳内でレシピをイメージしているそう。
「中華丼のレトルトは、麺だけで売っている皿うどんの具になります。おでんのパックは、非常時はそのままでも食べられるし、ふだんはうどんと合わせたりして使えます!」
また、トコさんは「災害時こそ食べる楽しみを」と話す。
「災害時“ちょい足し”できる調味料があると、気分転換になります。けれど、冷蔵庫が使えなくなると傷んでしまうものもあるので常温で保存できる調味料があると便利です。私の場合、ケチャップやマヨネーズはふだんから個包装のものを使っています。また、開栓後90日常温保存ができる醤油を、ふだん使いするのはかなりおすすめです」
そんなトコさんがおすすめする、“常温保存調味料”を紹介!
【ディスペンパック】
ビスケットやパンに塗ってスイーツに。いろいろな味があり、ふだんの朝食にも使いやすい。
【個包装調味料】
冷蔵保存の調味料は停電で傷む可能性が! 個別包装のものがあると便利。
【ピーナツバター】
未開封なら常温保存可能。支給されるパンのちょい足しに。カロリー摂取にも効果的。
【粉チーズ】
常温保存できるうえ、カルシウムが豊富なものも。洋風のちょい足しにぴったり。
【常温保存可能な醤油】
開栓後も90日間常温保存が可能。ふだんから使えばわざわざ備蓄しなくてもOK。
備蓄している食料だけでなく、配給される非常食も“ちょい足し”できる食材があると食べやすくなる。
「以前、アルファ米の試食会をしたときに、そのままでは食べにくくて……。でも、ごまや紅しょうがなどを“ちょい足し”すると、かなり食べやすくなったんです。いわゆる非常食は味が濃いものが多いので、塩気のない、いりごまがおすすめです」
ほかにも、“ちょい足し”品として、フリーズドライのとろろなどもバリエーションが出ていいのだとか。非常食は特別に備えるものではなく、ふだんの食生活の延長線上にあるものとして、気軽にとらえていこう!
「女性自身」2020年9月15日 掲載