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高齢者の再婚が増えている。国立社会保障・人口問題研究所によると、70歳以上の再婚数は’00年の1,718件から、’18年には3,955件と倍以上に急増中だ。

 

「60代から70代になると、外出が減り、一気に人と会う機会が少なくなります。そんな日々を過ごす70代の方が“あと10年、20年は生きられる”と思うと、一緒に食事をしたり、旅行したりと、人生を豊かに過ごせるパートナーを求める気持ちが生まれるんですね」

 

こう語るのは、中高年からシニアの婚活支援、結婚相談を行う「茜会」の後藤礼美さんだ。

 

「本当に元気なご高齢者は多く、茜会に登録されている最高齢の女性は82歳で、男性は86歳です。恋愛することは生きる活力と心の安らぎを与えるので、みなさん、とっても若々しくなります」

 

ただし、高齢の親の恋愛を素直に喜べない子どもも多いというのは、夫婦問題コンサルタントでファイナンシャルプランナーの寺門美和子さんだ。

 

「40代、50代の方からの、親の恋愛・再婚に関する相談は年々増加傾向にありますが『いい年して、はずかしい』『いきなりあらわれた再婚相手に、財産の半分も持っていかれるのは嫌だ』と、拒否反応を示す方が多いです。しかし、私たちも若いころ親から反対されて経験したように、恋愛は反対されればされるほど燃え上がるもの。思わぬトラブルに発展することもあります」

 

東京都在住の堀内美恵さん(56・仮名)も、その一人だ。

 

「11年前に母を亡くし、その1年後に父がまさかの再婚宣言。父とは母が亡くなってからずっと不仲だったので“もう他人だし、関係ない”と、音信不通状態でした」

 

ところが昨年、父が遺言も残さず、脳梗塞で急逝。ほとんど会話もしたことのない後妻と、相続の話を進めることになった。

 

「最初は大人同士だしなんとかなるだろうと思っていたのですが、いざ話し合いとなると、後妻は『金融資産はほとんどない』と言い張り、開示を拒否。私たち家族の思い出がつまった実家も、あっさり売却すると言いだし、大もめに。裁判をしようにも、裁判費用のほうが高くつくし、10年近く、父に寄り添ってくれたのは事実。結局、家の評価額2,000万円に対して、半分の1,000万円を現金で後妻に支払い、実家の権利を手にしました」

 

父親との音信不通状態を放置したために起きてしまったこのケース。生前、財産分与に関して話したり、遺言を書いてもらえていれば、このような事態は防げたはず。

 

親が存命中でもトラブルは起こり得る、と前出の寺門さん。

 

「親の再婚後、絶縁状態が続き、数年ぶりに連絡が来たと思ったら、親も再婚相手も認知症が進み要介護状態。そのうえ、再婚相手の子どもと連絡が取れず、途方に暮れるというケースもありました」

 

自分の恋愛を“応援してくれない子どもに、無理してまで財産を残したくない”と考えるのも、ごく自然な感情だと寺門さんは続ける。

 

「ある男性は、娘が探偵を雇って交際の事実を突き止め、恋愛を妨害しようとしたことに反発し、交際相手と高級旅館への宿泊を繰り返すように。また、別の女性は同じような理由で、『子どもに財産は残さない』と毎日、すし屋に特上の出前を頼み、そのつど、店員に1万円のチップを渡していました」

 

だが、話し合いができれば、親も子も苦しまないですむケースは多い。親も遺産について悩んでいるのだ。

 

神奈川県に住む、山本優子さん(79・仮名)は、5歳年下の男性と事実婚関係だ。

 

「私たちの交際を、3人いる娘のうち、長女だけが応援してくれています。次女、三女からは『だまされているんじゃないの』『お父さんは1人で十分。もう、孫に会わせない』と反対され、疎遠に。けれど、そろそろ財産分与も考えなければなりません。先日、娘たちに『会わないなら、財産をあげない』と伝え、ようやく話し合いができそうです」

 

母娘関係を取り戻せる日を、待ち遠しそうに話してくれた。

 

神奈川県在住の日吉勝さん(76)は、財産の使い道も家族にオープンにしている。

 

「前夫と死別した妻と知り合ったのは、4年前の茜会のお見合い。すぐに事実婚に発展し、かけがえのないパートナーになりました」

 

日吉さんは自分が先立った場合、事実婚の妻が守られるように、弁護士に相談し、配偶者と同じ立場であることを明記した「パートナーシップ契約」を結んだ。

 

「介護に関しては、お互い可能な限り2人で生活し、限界を超えたら施設に入ると決めています。その際も、金銭的負担は子どもたちにかけないと伝えているため、表立っての反対はありません」

 

日吉さんは再婚する親の気持ちを、こう代弁する。

 

「少ない財産ですが、私も妻も死んで、残っていれば2人の娘が等分に分ければいい。でも、生きているうちは、やはり私の人生です。残されたわずかな時間、楽しく生きることを認めてほしいと思います」

 

親の思いに耳を傾け、財産・介護・墓・葬式などトラブルを未然に防ごう。

 

「女性自身」2020年11月10日号 掲載

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