なぜかお金が貯まらない、老後の資産が不安……そんな考えは抱きつつも、意外ときちんと知らないことが多いお金に関する知識。直感に頼ってしていた判断を見直すことが、あなたを“貯め体質”に導いてくれるはずーー。
「お金に関する知識や情報を『知っている』と『知らない』の差は、ものすごく大きいです。そして、つかんだ情報を実行するかどうかで、それが人生を通じて1億円以上の差になるといってもけっして過言ではありません」
こう話すのは、ファイナンシャル・プランナーの前田晃介さんだ。
たとえば、現在はコロナ禍でさまざまな支援策が講じられているが、まずは、必要な情報を知ることができるか。そして、申請などの行動を実際に起こせるかどうかでその後の生活は大きく変わる。前田さんは、学生時代にお金の知識の重要性を痛感したという。
「親戚が不動産取引でかなり大きな負債を背負ったのです。騙されたのかもしれませんが、当時の僕は、知識や情報があれば失敗を避けられたのではないかと思い、まわりの大人たちに聞いてみました。でも、みんな『わからない』と言うんです。そのとき、お金に関する知識をきちんと持っている人は思いのほか少ないのだと気づかされました」(前田さん・以下同)
■「お金の話=難しい」と思い込まないで
それを裏付けるデータがある。18〜79歳、2万5,000人を対象にした「金融リテラシー調査」の年金に関する質問だ。「加入している公的年金の種類」は6割以上が知っているが、そのほか「年金の支給開始年齢」などの問いには半数以上の人が「知らない」と答えている。
年金に関するニュースなどで不安を抱きつつも、自分に関わるお金のことを意外と把握していないのだ。
「よく『お金の話は難しい』と言われますが、そんなことはありません。とにかく、興味を持つことが大切。興味があれば、知識や情報はどんどん入ってきます」
前田さんが、お金の常識を試すときによく用いるのが次の問いかけだという。
《3,000万円の住宅ローンを35年間で返済するとき、金利1%と2%とでは、総返済額はいくら違うでしょう?》
この設問で、「1%」をどう捉えているかがポイントなのだという。
「答えは約600万円。金利が1%違うだけで、総返済額はそれだけの差がつくのです。でも、答えよりも最初の印象が大切です。聞いた瞬間に『1%の違いは大きい』と感じた人は、金融感覚というか、お金のリテラシーがある程度身についているといえるでしょう。逆に『たった1%』と思った人は、注意が必要かもしれません」
「たった1%」と思った人が、これから金融に関する感覚を磨いていくにはどうすればよいのだろう。
「身近なところから、どちらが得か損かを考えるクセをつけるといいと思います。『なんとなくこっち』などと直感で決めるのは避け、その都度、電卓をたたいて、計算して。そうすれば、少しずつ感覚が磨かれていきます。得意なことから、少しずつ興味を広げていけばいいのです。変動費の節約ができているなら、次は固定費に目を向けてみる。いまは確定申告の時期ですから、節税を考えるのもよいでしょう」
また、「自分で解決しなくては」と、抱え込むのもよくないという。
「病気になったらかかりつけ医に診てもらうように、お金についてもかかりつけの専門家を見つけて、相談すればいいと思います。税金や年金、保険など、プロでないと難しいこともありますから」
「女性自身」2021年3月23日・30日合併号 掲載