「緊急事態宣言が解除されて『やっと孫に会える』と楽しみに上京したのに、娘からは『布マスクで来ないで!』『自分の箸で料理を取り分けないで!』と、注意ばかり。けんかになり、むしろ会う前より険悪になりました」(60代女性)
「実家に帰ったら、親からは『近所の目があるから出歩くな』だの、『外に出たら着替えろ』だの、うるさいのなんの。聞き流してたら、『しばらくは帰ってこないでくれ』と言われてしまって」(40代女性)
緊急事態宣言が明けた今、実家への帰省や親族の訪問を再開する人が増えている。だが、「そのことが新たなトラブルやあつれきを生んでいる」と言うのは、夫婦問題や家族問題についてのコンサルタントをしている寺門美和子さんだ。
「ワクチン一つとっても、夫妻で考え方が違い、家庭内分断が起きているほど。そこに新たな家族が加われば、いっそう複雑化します。ひさびさの一家だんらん。安心して、楽しく過ごすためにも、互いに配慮が必要なのです」
そこで、コロナ時代の帰省・孫訪問トラブルを防ぐ“新マナー”を専門家が提案。
【コロナワクチンを接種する】
もはや、ワクチンの接種は必須だ。ナビタスクリニックの医師・山本佳奈さんはこう語る。
「ワクチンには感染だけではなく、重症化を防ぐ効果もあります。祖父母と一緒に過ごすお子さん、お孫さんは、可能な範囲でワクチン接種をするべきでしょう」
しかし、ワクチンを打ったからといって、ほかの感染対策をおろそかにしていいわけではない。
「時間とともに、ワクチンによって得た抗体は減っていきます。感染のリスクはあるので、対策は怠らないように」(山本さん)
【感染対策のルールをすり合わせる】
「人によって、コロナへの警戒度合は違います。マスク、消毒、換気などの日々の細かい感染対策の違いは、イライラやけんかの原因にもなる。事前に共通認識を持っておきましょう」(寺門さん)
では、どのような部分を決めておけばいいのか。
「高齢者は布マスク、若い人はウレタンマスクを利用したりしています。しかし、集まるときは、感染対策にいちばん効果的といわれる、使い捨ての不織布マスクに統一するべきです。また、手が荒れているため、アルコール消毒ができないケースもあります。その場合は、こまめにせっけんで手洗いするルールに。食事の際は、お孫さんに料理を取り分けてあげたくなるものですが、あらかじめ小分けにすることも感染対策になります」(山本さん)
【ローカルルールを事前にチェックする】
住んでいる地域、住んでいるマンションによって、それぞれルールがある場合も。
「たとえば、エレベーターに乗る前に、設置してあるアルコール消毒をして、階数のボタンは直接指で押さず、鍵などを使って押すことをルールとしているマンションもあります。こうしたローカルルールは住人しか知らないので、事前に聞いておきましょう」(寺門さん)
また、自分の住んでいる地域の“あたり前”が別の地域だと非常識にうつることも。
「感染者の少ない地域で“ワクチン接種したから”と、マスクをせずに外を歩いている人が大勢いて驚いたという話も聞きました。こうした地域の常識のまま、感染者が多い地域に行くと、冷たい目で見られるでしょう」(寺門さん)