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年に1度、公的年金の財政をチェックする「年金財政検証」がいま、行われています。論点の一つが「遺族年金」です。

 

遺族年金は、家計を支える方の死後に配偶者や子どもなどがもらえる年金です。重要なセーフティネットですが、4月ごろ「遺族年金廃止か」とSNSで騒がれました。

 

「廃止」はもちろんデマです。いま実際に議論されているのは、遺族厚生年金の男女差についてです。

 

そもそも遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。

 

遺族基礎年金は、公的年金に加入する方すべてに受給資格があり、配偶者が亡くなったとき18歳未満の子がいれば受け取れます。受給額は子どもの人数によりますが、18歳未満の子が2人の場合は月約10万7千円。子どもが18歳を超えるまでもらえます。

 

いっぽう遺族厚生年金は、厚生年金の加入者などが亡くなった際、受け取れるもの。18歳未満の子どもがいない配偶者も受け取れる点が、遺族基礎年金と違います。それだけ遺族厚生年金は保障が手厚いのですが、遺族が女性か男性かで受給条件が大きく違います。

 

遺族が夫を亡くした妻の場合、妻が30歳以上なら子の有無にかかわらず生涯、遺族厚生年金を受け取れます。妻が30歳未満と若くても5年間は受給できますし、夫が亡くなったとき妻が40歳以上65歳未満なら「中高齢寡婦加算」が上乗せされます。

 

しかし、遺族が18歳未満の子のいない夫の場合、妻の死亡時に55歳以上なら、60歳から遺族厚生年金を受給できます。55歳未満だともらえないのです。

 

■遺族基礎年金は女性並みに男性の支給条件を引き上げた

 

制度設計が古く、夫が外で働き妻は専業主婦の家庭がモデルなのでしょう。稼ぎ手である夫を亡くした妻に手厚い制度ですが、共働きの増えた現代には適切ではありません。そこで、男女差を見直すことが検討されているのです。

 

実は、遺族基礎年金は2014年に男女平等に改正されました。それまでは、18歳未満の子のある妻が遺族となった場合にのみ支給されていましたが、2014年以降は先述のとおり男女に関係なく、妻を亡くした夫にも支払われています。

 

ポイントは、それまで優遇されていた女性の支給条件や支給額に、男性もそろえた点です。

 

今回の遺族厚生年金の男女差是正論議でも、いま優遇されている女性に合わせる形で、男性の支給条件などを見直す改正となればいいのですが、年金財政の悪化は皆さんご存じのとおり。年金財政のスリム化を掲げて、女性の支給要件を厳しくする方向に変わるのではないかと心配しています。

 

とはいえ、議論は始まったばかりです。年金財政検証の結果は今夏に発表される予定です。私たちは、そこで示された指針をしっかりと確認し、その後の国会審議なども注視しましょう。

 

遺族厚生年金がいまより“改悪”に進まないよう、議論の行く末を厳しく見守りたいものです。

経済ジャーナリスト

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