鍋シーズン到来を前に、具材の高騰が続いている。
鍋の王様といえば、“すき焼き”だが、今年は「一家団らんですき焼き鍋を囲む」ことが、ますます贅沢になりそうだ。
「当店では、以前は安かったアメリカンビーフのコーナーを廃止して、国産牛に戻しています」
そう明かすのは、鮮度と安さが自慢のスーパーマーケット「アキダイ」(東京都練馬区)代表の秋葉弘道さん。長引く円安傾向により、“庶民の味方”だった輸入肉の価格も高騰。「むしろ国産牛のほうが割安」という状態が続いている。
そもそも、「価格高騰の影響で、消費者の牛肉離れが加速している」と指摘するのは、消費生活アドバイザーでファイナンシャルプランナーの丸山晴美さん。
「すき焼きでも、牛肉は使わず豚肉か鶏肉がメインというご家庭が増えています」(丸山さん)
ところが、頼みの綱の“豚肉”も高値が続く。
「今夏は、豚肉価格が例年の1.8倍まで高騰しました。現在は、少し落ち着いてきていますが、まだ例年より高いです」(秋葉さん)
農業産業振興機構によると、昨年9月に270円kgの仕入れ値だった国産豚ロースが、今年9月には275円kgに。猛暑の影響で繁殖に影響が出たことや、飼料代の高騰などが影響しているという。
野菜価格の高騰も続いている。すき焼きに欠かせない春菊(1袋)の小売価格は299円。値上げラッシュ前の2021年と比較すると56円も高騰している。ネット検索してみると、有機にいたっては700円を超える高値のものも。
「春菊は、例年に比べて2割髙になっています。猛暑の影響で、葉物野菜全般が“高温障害”で不作になったことが一因です。
そのうえ10月に入っても暑さが続いたため、種まきが遅れ、鍋シーズンの10月中旬になっても収穫が追いついていないことが高値に拍車をかけています」(秋葉さん)
例年、春菊の種まきは9月中旬から始まるのだが、今年は大幅に遅れたという。
加えて、鍋料理全般に使われるきのこ類も「約2割髙になっている」と秋葉さん。生しいたけ(1パック)は、昨年と比べて17円高に。
「生産コストや輸送費が上がっているので、価格転嫁しないと経営が成り立たないのです」(秋葉さん)
昨年と比べて価格が落ち着き、安定していた卵も、再び厳しい状況に……。
「飼料代の高騰に加え、残暑の影響で、にわとりがバテて卵を産みにくくなったんです。今年7月に200円/kgだったM基準の卵価格は、10月に約270円に高騰しています」(養鶏関係者)
加えて、「すき焼のたれ」(エバラ)も、昨年より60円高に。来年には、さらに鍋のもとの値上げが予定されているという。
こうした情報を基に編集部が算出した結果、すき焼き鍋(4人分)の価格は、2021年が2,924円、2024年は3,646円。値上げラッシュが本格化する前と比べて、なんと722円高騰している。
ほかにも、寄せ鍋、キムチ鍋も価格が上がっており、週に2回、月に8回鍋料理をした場合で、月あたり約3,500円の支出増となることがわかった。
鍋料理に欠かせない白菜やにらが1.5倍になっていることなどが、コスト増の大きな原因となっている。
問題は、こうした高値が、いつまで続くのか、という点だ。
「輸入牛肉の高騰は、円安の限り続くでしょう。暑さで不作だった春菊などの葉物野菜は、生産が増える11月頭には、価格が落ち着きはじめると思います」(秋葉さん)