《親の介護で借金地獄へ》50代を待ち受ける“悲惨リアル実例”4つ…プロの対処法は
画像を見る ショートステイの居住費、食事代、おむつ代等の日用品は介護保険の適用外。ショートステイを多用し過ぎると大きな出費に(写真:つむぎ/PIXTA)

 

独身のDさん(55歳男性)は母と同居して介護を続けていた。

 

だが、平日は残業も多く在宅介護は難しい。とはいえ、Dさんに施設介護への抵抗があり、平日5日間は「ショートステイ」を利用し、土日は自宅で介護していた。

 

ショートステイは介護保険サービスの一つで「短期入所生活介護」と呼ばれるもの。介護施設で短期的に生活するものだが、現在「連続利用は30日まで」というルールがある。土日は自宅に戻るDさんの使い方はまったく問題がない。

 

ただし、ショートステイの居住費、食事代、おむつ代等の日用品費は介護保険の対象外だ。毎月の介護サービス費は1割負担だが、保険適用外と合わせた料金は、月13万5千円になっていた。

 

Dさんには月30万円の収入と母の年金があった。だから「なんとかなるだろう」と思っていたが、読みが甘く、足りない分をキャッシングやカードローンで補っていた。Dさんは700万円超の借金を抱え、柳澤さんに相談に来たという。

 

【こうなる前に】

 

「介護施設に抵抗があったのは、母ではなくDさんでした。『なんとなくかわいそう』というのは施設介護への理解不足だと思います」

 

それでもDさんは、ケアマネに「特養(特別養護老人ホーム)に入れますか」と聞いたことがあったという。ケアマネは「なかなか難しいですね」と返答したというが、このとき、Dさんの家計がひっ迫していることなどを伝えていれば、ケアマネからもっと違った提案があったのでは。

 

【こうなってしまったら】

 

Dさんが柳澤さんに相談したかったのは、介護のことではなく、自身の家計管理についてだった。

 

「ですが、母の介護費用の負担が大きいので、介護問題についても同時に対策をお伝えしました」

 

母は、同居するDさんに扶養されている状態だった。

 

「Dさん自身の家計状況をケアマネに伝えて、Dさんと母の世帯を分離して施設入所を検討しましょうと提案しました」

 

世帯分離とは、同居していても住民票を分けること。母は単独の世帯となり、わずかな貯金と国民年金しか収入のない母は、生活保護を受け、特養に入所することになった。

 

生活保護は日常生活に必要な費用を支える生活扶助だけでなく、住宅扶助や医療扶助、介護扶助などがある。特養などの公的な介護施設の利用料については、年金で足りない部分を生活保護でカバーできる。

 

介護費用を捻出する必要がなくなったDさんは、自身の家計管理に集中できるようになった。家計簿をつけ、自炊し、計画的に暮らせるようになったという。

 

「『施設はかわいそう』というのは、Dさんの間違った思い込みだとわかったようです。

 

経済的にも肉体的にも負担がなくなったDさんは、数年かけて貯金できる状態に改善しました」

 

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