賃貸住宅で、最近「定期借家契約」が増えています。
定期借家契約とは、契約期間を2年などとあらかじめ決めて、期間が過ぎたら契約は終了するというもの。更新や途中解約は原則できませんが、期間後に大家と借り手が合意したら、新たな契約として再契約できます。
いっぽう従来の「普通借家契約」は借り手が強く守られた契約です。2年ごとなどに更新がありますが、大家は正当な理由がない限り更新を断れません。借り手が住みたいと言えば住み続けられる契約です。
定期借家契約は2000年に導入されましたが、最近までは限定的でした。ですが2025年12月の調査で、住宅情報サイトに掲載された賃貸物件のうち定期借家の割合が、東京都では2022年の5.7%から2025年は9.3%と3年間で3.6ポイント、神奈川県は2022年の4.4%から2025年は8.5%と4.1ポイント上昇したことが判明。埼玉県、千葉県も増えています(LIFULL)。首都圏以外でも「気に入った賃貸物件は定期借家ばかりだ」という声も。
定期借家が増えた原因は、大家側のメリットにあるようです。
大家は普通借家だと、周辺住民とトラブルを起こすなど問題のある人でも退去してもらえないことに困っていました。ですが定期借家なら、契約満了で退去が確定。居座られる心配がないので「マイホームを転勤中の3年間だけ貸す」といった物件も増えました。
加えて最近は建築費の高騰を受け、不動産価格が上昇しています。新築マンションの販売価格は2025年の全国平均で1戸当たり6千556万円。9年連続で最高値を更新中です。さらに東京23区では1億3千万円超と驚くほどの高騰ぶりです(不動産経済研究所)。
その影響もあり賃貸物件の家賃も上昇中です。更新時に家賃値上げの通告を受けた人もいるのでは。
ですが普通借家の場合、家賃アップには借り手の合意が必要です。大家が一方的に上げることはできず、交渉の余地があります。
いっぽうの定期借家なら、大家は契約満了時に「次の契約では家賃を3万円上げます。それでよければ再契約します」と言えます。仮に借り手が値上げを拒んだら、再契約しなければいい。家賃アップのしやすさで、定期借家を選択する大家が増えているのでしょう。
借り手にとって定期借家のメリットは家賃が安いこと。頻繁に住み替えたい人や自宅建て替え中の仮住まい、高齢者施設に入居するまでの住まいを探している人などにはよい選択肢でした。ただこのまま家賃が上がり続けると、メリットがなくなる可能性もあります。
また、定期借家は原則途中解約ができない点にも注意が必要です。とはいえ、転勤や療養、介護などやむをえない理由があれば途中解約できますが、たとえば近県への転勤がやむをえない理由とみなされるかは大家によると思います。
定期借家を「安いから」という思い込みで選ぶのは危険です。
【PROFILE】
おぎわらひろこ
家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数
