■レジで後ろの人が舌打ち
菊池氏の説く「50%・70%」の境界線は、本来、家計をやりくりする上での合理的な判断のはずだ。しかし、1円の取りこぼしさえ恐れる焦燥感は、時として周囲との軋轢を生み、家庭のバランスさえゆがめていく。
「還元率がわずかコンマ数パーセント変わるだけで、強迫観念に襲われるんです。レジが混んでいるときに、どの決済ルートを通すのがいちばん得か、スマホを操作してアプリを切り替えるんですが、その数秒のモタつきが原因で、後ろの人に舌打ちされて。そのたび『俺、たかだか数十円のために何してんだか』と、みじめな気持ちになります」
そう語るのは、愛知県の化学メーカーに勤務する目黒浩樹さん(47・仮名)だ。彼はnoteで「ポイ活中毒」を名乗り、自作のWebアプリで数十のサブスクやキャンペーンセールも管理している。給料が上がらぬ一方、物価高の負担が増すなかで、これまでの月2万円の小遣いを実質的に打ち切られた目黒氏にとって、このやりくりは“死活問題”だ。
「出張時の宿泊費をカード払いにして、しかも各種サービスの相乗りで、それぞれ数百円分のポイントを二重・三重取りしたりしています。しかし、そんな泥臭いことをして貯めても、せいぜい年間で3~4万円分ですかね。それらを運用に回しても、最大で20万円分、貯まったかどうか」
こう嘆く目黒さんには元から収集癖があり、彼にとってポイ活は、かつてシールやおまけの玩具ほしさにお菓子を買い集めた感覚に近い。クレジットカードは、最大で30枚ほど持っていた時期もあったという。
「サラリーマンは、審査にはまず通りますからね。でもあるとき、妻がポイントほしさに、僕の名義で10枚近くカードを作っていたことが発覚したんです。入会特典などで得た数万のポイントを、すべて妻は『アメーバピグ』の“着せ替え”に使っていました(笑)。審査を通ったのは僕なのに、何の報いもない。そう抗議しても、妻は『あんたの奥さんとしてポイ活に協力してるんだから、これくらい当然でしょ』と言い放つんです」
「ポイ探」の菊地氏は、自らが所有する140枚のカード情報を精査し続けている立場から、情報の取捨選択についてこう総括する。
「一般の方で30枚は持ちすぎですね。管理も難しいでしょう。どんな分野でも、すべてを追いかけるのは不可能です。情報の取捨選択をせずに100%を追おうとすれば、効率は著しく低下します。50%でいい、残りは捨ててもいい。その一線が引けなければ、ポイ活は利益を生む手段ではなく、ただ時間を浪費するだけのシステムに成り下がってしまうでしょう」
3兆円といわれるポイ活市場。そのシステムを構築する企業のアルゴリズムと、わずか数十円の利益を求め、余暇を捧げ、個人情報を提供し続けるサラリーマン。それぞれが追い求める「数字」の先に、果たして何が待ち受けるのだろう。
(取材・文:鈴木隆祐)
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