経済ジャーナリスト・荻原博子さん(写真:本誌写真部) 画像を見る

6月19日「改正郵政民営化法」が成立しました。

 

現在は持株会社「日本郵政」の傘下に、郵便事業の「日本郵便」と銀行事業の「ゆうちょ銀行」、保険事業の「かんぽ生命」の3社が並ぶ構造です。特に日本郵便は郵便物が減少するなか、約2万4千もの郵便局の維持、全国一律料金での郵便配達事業などで赤字続き。ゆうちょ銀行とかんぽ生命の収益で支えられている状況です。

 

改正法のポイントは、赤字の日本郵便に年650億円の公金を投入すること。これまで早期売却を目指していたゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式は、当分の間日本郵政が3分の1超を持つことも盛り込まれました。2社が日本郵便を支える構造を維持したうえで、それだけでは足りないと判断。来年度から年650億円を投入します。

 

そもそも郵政民営化の前、当時の「日本郵政公社」は国の優良事業でした。民間企業の法人税に代わる「国庫納付金」を、2003~2007年の4年間で約9千600億円納める国の事業の“稼ぎ頭”だったのです。

 

にもかかわらず、小泉純一郎元首相が「聖域なき構造改革」と銘打って民営化を断行しました。

 

郵政公社から、郵便配達のついでに生命保険の手続きや高齢者の貯金を預かるなどの利便性をはぎ取りました。

 

■忘れている郵便貯金がないか必ずチェックを!

 

いっぽう、民営化後も日本郵政株の一部を国が保有する“半官半民”企業として常に「民業圧迫」の批判を受けています。新商品の開発もままならず、企業経営は窮地に追い込まれ、顧客情報の不正流用、かんぽ生命の保険金不払い、「ドコモ口座」などの不正引き出しなど不祥事が続きました。過度なノルマに年賀状などを自腹で買い取る“自爆営業”や長時間労働、過労死などの問題も山積です。

 

改正法では、2年をめどに郵便事業の改革を政府が検討するとしましたが、日本郵便の明るい未来は想像しづらいのが現実でしょう。

 

今回650億円の財源として「消滅貯金」が上がっています。消滅貯金とは、2007年10月の郵政民営化前に預けた郵便貯金で、満期から20年2カ月以上たち、払い戻しの権利がなくなった貯金のこと。民営化後のゆうちょ銀行や一般の銀行は10年間取引がないと預金保険機構に移管され「休眠預金」になりますが、引き出しはいつでもOK。民営化前の郵便貯金だけ、“消滅=国が没収”がルールです。

 

消滅貯金は2025年3月時点で約3千200億円といわれます。消滅前に「催告書」という通知が郵送されますが、引っ越しなどで約8割は届かないといいます。

 

皆さん、忘れている郵便貯金はありませんか。通帳や貯金証書がなくても、身分証明書を持参すれば調査は可能。戸籍謄本などがあれば亡くなった方の調査もできます。消滅貯金も事情次第で払い戻しに応じてくれることも。

 

帰省の際、親御さんにも確認してください。少しでも心当たりがあれば、ゆうちょ銀行にご相談を。

 

【PROFILE】

おぎわらひろこ

家計に優しく寄り添う経済ジャーナリスト。著書に『65歳からは、お金の心配をやめなさい』(PHP新書)、鎌田實氏との共著『お金が貯まる健康習慣』(主婦の友社)など多数

 

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