桃の旬は初夏から初秋。この時期に桃を食べるのは、単においしいからだけではない。桃には、夏バテ予防に欠かせないスタミナ栄養素のビタミンEとナイアシンが豊富に含まれている。Mサイズの桃の可食部を200グラムとすると、1個に含まれるビタミンEは1.4ミリグラム、ナイアシンは1.2ミリグラムほど。これは、うなぎのかば焼き1/4切れ(約25グラム)に含まれるビタミンEとナイアシンと同レベルの含有量だ。
スーパーでふつうに並ぶものでさえ、うっとりするほど美しい桃。最高級品ともなれば、その味わいはまた格別なはず。そこで、日本でもっとも高級な桃のブランドのひとつである山梨の「春日居の桃」の生産者、「こうはん農園」に取材を申し込むと、大田市場で行われる春日居の桃の品評会に記者を招待してくれた。大田市場とは、東京都大田区にある野菜と果物の大市場。
朝6時。すでに春日居の桃の関係者ご一行が、自慢の春日居ブランドの桃のアピールにやって来ていた。果物の仲買人やセリ人らも続々と集まり、バインダーを手に桃を物色し始める。
そんな中で始まったのが、春日居の桃の試食。巨大な容器にてんこ盛りのカット桃「白鳳」と「浅間白桃」が現れると、訪ねていた桃関係者はもちろんのこと、別の果物や野菜の関係者までがどこからともなく湧いてきて、桃に一直線!市場関係者にもやはり、高級桃は大人気なのであった。
記者もさっそく食してみる。歯を入れた瞬間、果汁がブワッとあふれ出す。実はしまっているのに途方もなくジューシーで、強い香りにむせかえるほど。そして遅れてやってくる、濃厚な甘味!といても、甘いだけでなく深いうま味も感じられ、これは……おいしいッ!白鳳はふわっとやわらかい果肉で、浅間白桃は少し歯ごたえがある感じ。
試食が終わると、いよいよセリがスタート。6玉入り2キロ化粧箱入りの桃が次々とセリ落されていく。そして、さまざまな農家の桃の中でもえりすぐりの、木箱入りの極上品のセリへ。注目が集まるなか、18玉入り7.5キロ木箱1箱がなんと30万円で落札!12玉入り5キロ木箱1箱は20万円。これらをセリ落とした仲買人に話を聞くと、某有名高級果物店Sに卸すとのこと。
あまりの高値にひるむ記者に「今日は生産者も来ている品評会だから、生産意欲を高めるための“ご祝儀相場”なんだよ」と教えてくれた仲買人氏。
春日居の桃は高級店に卸されるほか、通販でも購入可能。桃源郷の香りはかくや、という馥郁たる高級桃の味、死ぬまでに一度は賞味されたし!