加齢とともに、多くの人が血圧を上昇させてしまいがち。この厄介な悩みを遠ざける有効な手段が、なんといっても食生活の改善だ。いますぐできる“降圧ルール”を徹底解説ーー!
「中年以降は、血圧を意識した食生活を送らないと、加齢とともに血圧が高くなる傾向があります」
管理栄養士で女子栄養大学名誉教授の三浦理代先生はそう警鐘を鳴らす。特に女性の場合は、ホルモンバランスが崩れる更年期以降に高血圧になる傾向が著しい。加えて、昨年から続くコロナ禍におけるストレスや運動不足が加わり、私たちの気づかないところで高血圧のリスクは高まっているというから厄介だ。
「血圧が上昇すると、脳卒中や心筋梗塞などのほか、糖尿病や動脈硬化などさまざまな疾患のリスク要因となるため、気をつけてほしいところです。高血圧はそのような危険があるいっぽうで症状がわかりづらいことから別名“サイレントキラー”とも呼ばれ、気にしない人が多いのが問題です。症状が出た段階ではすでに遅いのです。血圧はある程度、食事でコントロールすることが可能です。ふだんの食事習慣から高血圧のリスクを抑えることは大切です。食事で血圧をコントロールするためには、まず自分にとっての食事の常識を見直す必要があります」(三浦先生・以下同)
何を食べるか、はもとより、どう食べるか、いつ食べるかが重要になってくるという。三浦先生が挙げる血圧を下げるための「食事の基本」は次の5つだ。
【1】できたてを食べる
「作りたての料理は、香りや味、舌触りなど、どれをとっても最もおいしく食べられるもの。素材の味が最も引き立つのが作りたての料理です。できたてだと調味料の量も最小限でおいしく味わうことができるため、塩分が少なめでも十分においしく食べることができるのもメリットです」
ただ、気をつけたいのは汁物や麺類など、アツアツで食べるメニュー。熱いものを食べる際は舌が塩気を感じにくくなるため、つい塩分オーバーになりがちなのだという。食べるときは適温まで冷ましてからにしたほうが、舌が正しく塩気を感じることができる。
【2】よくかんで食べる
「よくかんで味わうことは、消化の観点からも非常によいこと。よくかむことで、素材の栄養素を抽出し、胃で吸収しやすくします。反対によくかまずに食べると、結果的に食べすぎてしまい、肥満につながったり、中性脂肪やコレステロール値が高くなる原因ともなってしまいます」
【3】おかずから食べる
「血糖値コントロールの観点から、おかずから食べ始めて、それから米などの主食を食べるというのは正しい選択です。ここでも、食べすぎを防ぐという意味でおかずから食べ始めるのはおすすめです」
また、少ない分量でいろんな栄養素を取れるのも、おかずからだ。気をつけたいのは天丼やかつ丼などのどんぶりもの。ごはんと同時に食べるメニューは、血圧上昇を防ぐためにはできるだけ控えたい。
【4】夕食から朝食まで12時間はあける
「夕食後、朝食を取るまでは12時間以上あけてください。胃を休める時間が十分でないと、内臓全体に負担がかかります。内臓を休めることは、血管への負担が軽減されることにもつながるのです。また、3食をきちんと適切な時間に、適切な量食べることも大切。朝昼晩のボリュームは3:3:4が理想的だという調査があります。朝食と昼食をしっかり取って、夕食の量を軽めにするように変えていきましょう」
【5】毎食、フルーツを入れる
「果物には食物繊維やカリウムを豊富に含むものが多くあります。糖分を気にされる方もいらっしゃいますが、果物の糖分は砂糖の糖分とは異なり、消化に時間がかかります。それよりも、フルーツに含まれる食物繊維による整腸作用やカリウムによるナトリウム排出作用、抗酸化作用を考えると、フルーツのメリットは大いにあります。1日200グラム程度のフルーツを目安に食べるとよいでしょう」
実際、毎日りんごを食べ続け、10日後に血圧が6mmHg下がったという報告もある。気になった項目は、さっそく今日の食事から改めてみよう。