新宿区では、ハトをひき殺した容疑でタクシー運転手の男性(50)が逮捕された。
「逮捕は12月5日、容疑は鳥獣保護法違反です。“ハトの群れに突っ込んだのは許せない”という意見があるいっぽうで、“警察が捜査して逮捕するほどの犯罪か”といった意見もあります。
事件の背景には、東京都のハトが適正数を超えており、さらに人間をあまり怖がらなくなったこともあるといわれています」(全国紙・社会部記者)
東京都環境局のポスターによればハトにエサをあげることで、《数が増える 人を怖れなくなる 人間に依存して生きるようになる 被害を与えて嫌われる》といった影響があり、最終的には《人とハトとのあつれきが生じ、共存が難しくなります》という。
だが、世の中には“ハトにエサを与えることをやめない人”がいるのも事実だ。東京都内の、ある川沿いの歩道はハトのフンで汚れている。《ハトにエサを与えないで!!》と、注意を喚起しているポスターも、フンまみれになっているほどだ。周囲のマンションには、ベランダにハト除けのためのCD(もしくはDVD)を吊るしている部屋もあった。
禁止されていることを意識しているのか、ハトたちのほうを見ずに、ポケットからエサを落としつつ歩いている女性もいる。そのいっぽうで、ポスターのすぐそばで、盛大にエサをばらまいている女性もいる。
エサをあげている最中の女性を取材すると――。
――《エサを与えないで!!》というポスターも、そこに貼ってありますが、なぜエサをあげているのですか?
「だって、かわいいじゃない」
――道もフンだらけですし、ハト除けのCDを吊るしているお宅もありますが?
「他の人だってエサをあげているし、ハトたちも喜んでいるのだからいいじゃない」
女性はエサをあげる手を止めようとはしなかった。
そこで禁止ポスターを管轄している東京都環境局の担当者に話を聞いた。
――東京都でハトが増えているのは、人間のエサやりが原因なのでしょうか?
「東京都内の公園などにも木の実がなっており、ハトたちはそれを食べて生きていくことができます。私どもは、ドバトの繁殖数の調査をしておりませんので、はっきりとは申し上げられませんが、一般的にいえば、人間によるエサやりが、適正な数を上回らせている原因の1つと考えられます」
――禁止ポスターも貼ってありますが、罰則はないのでしょうか?
「東京都の条例には罰則はありません。ただ、世田谷区、大田区、荒川区などでは区の条例でエサやりを禁止しており、一部の区では罰則を規定しています」
確かに大田区が配布しているポスターには《ハト・カラスへのエサやりによる被害を公共の場所に発生させることを禁止→過料5,000円の対象となる場合があります》といった一文も。
「しかし罰則がある地域でも、エサやりによる被害は証明が困難なためもあるのか、実際に罰金を科せられたという事例はあまりないようです」(前出・社会部記者)
ひき殺し事件で逮捕された運転手は、「道路は人間のものだ。よけるのはハトの方だ」と発言したという。事件は、人とハトが共存できなくなっている一例でもあるのか。