画像を見る

クレジットカードの不正利用は、2023年の被害額が約541億円と過去最悪になりました。前年から23.9%の増加で、10年間で約5倍に膨らんでいます(日本クレジット協会)。

 

不正利用の9割以上が、カード番号を盗まれての被害です。電子メールやSNSで偽のホームページに誘導し、クレジットカード情報などを盗むフィッシング詐欺と呼ばれる手口が多いのです。

 

ただ以前の詐欺メールは日本語としておかしな言葉遣いがあるなど、比較的容易に見分けられました。でも最近は、自然な日本語で書かれた詐欺メールや本物そっくりの偽サイトなど、見た目で判断するのが難しくなっています。

 

また、2023年から増えたのがふるさと納税での不正利用です。フィッシングで盗んだカード情報で、犯人はふるさと納税を行う。返礼品を受け取ったらすぐに転売し、現金を得ます。カードの持ち主は、不正利用に気づいてカード会社に連絡すると、補償があるので利用額の支払いは免除されます。問題は自治体で、寄付額が入ってこないのに返礼品はすでに配送済みという被害が増えているようです。

 

■利用明細がネットに移行してチェックをしない人が増え

 

不正利用を防ぐため、私たちは怪しいメールを開かないといった注意は必要ですが、実は防ぎようのない手口もあります。最後の砦は、不正利用があったらすぐに気づくこと。毎月のカード利用明細のチェックです。

 

以前は紙の利用明細が毎月送られてきたので、多くの方がチェックしていたでしょう。しかし最近は紙の利用明細が有料となり、ネットでの確認に移行したことで、チェックしない人が増えています。

 

詐欺師らはこうした状況を利用して、数千円単位の引き落としが毎月定期便のように繰り返される不正利用を増やしています。高額の不正利用だと、カード利用の総額を見るだけでも気づきやすいのですが、数千円単位だとわからないことも多いでしょう。

 

前述のとおり、カード会社は不正利用を補償してくれますが、不正利用を届けた日から60日前までなどと期限が決まっています。定期的な不正利用を長期間放置していたら、60日より前の被害は戻ってきません。

 

きちんと明細を見て、レシートなどと突き合わせる作業が必要です。月末に必ず行うなどルーティン化してください。

 

経済産業省は不正利用の防止にワンタイムパスワードの利用をすすめています。SNSに1回だけ使えるパスワードが届き、それを入力することで決済が可能になるものです。簡単なひと手間で防止できるのはありがたいのですが、専門家にはもっと強力な防止策を考えていただきたいものです。

 

いまは23カ月連続で実質賃金がマイナスという家計の危機です。たとえ数千円でもムダにはできません。怪しいと思ったら、カード会社に電話で問い合わせを。詐欺メールに返信してはいけません。

経済ジャーナリスト

【関連画像】

関連カテゴリー: