ヒートショックの原因は、急激な温度変化と思われがちだが、実は、健康のためにやっていたことが一因の可能性も! そこで、年を取ったら逆効果な節制を老年医学のスペシャリスト・和田医師が解説!
「日本人はいわゆる“正常値”を真面目に受け取って、忠実に実践しようとしますが、高齢になると、健康のためによかれと思ってやっていることが、実は逆効果、ということも結構あります」
こう話すのは医師の和田秀樹先生。和田先生が指摘する、“やりすぎ”により逆効果が懸念される6つの習慣をみてみよう。
【1】塩分控えめ
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日に推奨される塩分量は男性が7.5g、女性が6.5g未満だが、この数値だと塩分不足だと和田先生は指摘する。
「ニューイングランドジャーナルという海外の権威ある論文では、1日に摂取する塩分量が10~15gの人たちが最も死亡率が低いという研究結果が出ています。逆に1日7.5gの人は死亡率が40%増えています」(和田先生、以下同)
塩分が足りないと、低ナトリウム血症になって意識障害になったり、頭がぼんやりすることにもつながる。暑い季節は熱中症にかかりやすく、寒い季節はヒートショックの原因にも。特にヒートショックは、低ナトリウムのときに起こるので、高齢になるほど塩分を控えることで、このリスクが高くなると思ってもよいだろう。
「昨年末に、女優で歌手の中山美穂さんがお風呂で溺死したとみられるという残念な事故がありました。詳しい原因はわかりませんが、もしかしたら、塩分摂取量が足りていないために、意識障害を起こして、お風呂場で溺れた可能性だってあるのです」
【2】卵を控える
「卵が体内のコレステロール値を上げると信じられて卵を控える風潮ができました。今でもその固定観念に捉われている人も。しかし、コレステロールは免疫機能を維持したり、細胞膜を丈夫にし、女性ホルモンの材料になるなど、体に不可欠なものです。また、コレステロールが少し高い人のほうが長生きすることがわかっています」
東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター)が70歳の高齢者を対象に15年にわたって追跡調査した「小金井研究」によると、最も長生きだったのが男性ではコレステロール値が190~219mg/dl、女性では220~249mg/dlの正常よりやや高めのグループだったという。
「女性は特に更年期以降はエストロゲンの分泌が止まるため、コレステロール値が高くなりがちです。しかし、コレステロールは免疫機能とも関係しているため、少しくらい数値が高くても全く問題ありません。逆に薬で下げようとするなんて、もってのほかです」
【3】肉を控える
タンパク質を取るうえで欠かせない「肉」だが、高齢になるにつれて動脈硬化などを恐れて肉を控える人が増えている。
「筋肉が落ちていく高齢者にとって、肉はむしろ積極的に取ってほしい食品です。お肉をよく食べてコレステロール値が高い人ほどがんになりにくく、コレステロール値が低い人ほどなりやすいということもわかっています」
免疫機能が活性化していれば、新型コロナやインフルエンザなどの感染症にもかかりにくくなる。さらに、肉に含まれるセロトニンはうつを防ぐ働きもある。
「高齢の女性でも元気に見える人は少しぽっちゃりで、肌のハリ、ツヤもあります。高齢になったら、メタボよりもフレイル対策にシフトしましょう」
