経済ジャーナリスト・荻原博子さん(写真:本誌写真部) 画像を見る

パナソニックは10月から早期退職の募集を始めました。「天下のパナソニックが経営不振?」と驚く方もいると思いますが、最近は、黒字企業が早期退職を募るケースが増えています。

 

東京商工リサーチによると、2025年1月?8月末に募集された早期退職者数は1万108人。すでに2024年の1年分を超えました。

 

しかも、早期退職を募る企業の6割が黒字企業です。早期退職の募集は退職を促す“リストラ”とは違うのですが、昨今“黒字リストラ”と呼ばれ注目されています。

 

企業の思惑は“使える人材”中心の少数精鋭に絞り、残った資金をIT技術に投入したいなどでしょう。ですが、早期退職は退職勧告ではありません。退職か会社に残るかは、社員が判断します。

 

早期退職を選ぶ場合は、退職金の上乗せや再就職の支援などが受けられます。パナソニックなら退職金は最大で数千万円の上乗せや、再就職の支援、転職活動のために最大3カ月の休暇取得などの優遇措置があります。企業には相当な資金が必要ですから「業績好調なうちに」というのも納得です。

 

いっぽうで会社に残る場合は、「50代の役職定年で給料が下がり、60歳で定年、再雇用で働いたとしてもさらに給料が下がりますよ」と説明されると思います。

 

■「妻も働き夫婦で協力すれば大丈夫」という判断も

 

「退職金多めの早期退職」か「給料が下がっても安定企業で働く」か、悩んでいる場合は、夫婦で家計の面から考えてみましょう。

 

まずは資産の洗い出しから。現在の貯蓄ともらえる予定の退職金を計算しましょう。早期退職は退職金の上乗せ額を提示しますから、およその金額はわかると思います。

 

次は借金などです。住宅や教育資金、自動車などのローン残高を調べてください。また、子どもが独立前なら今後必要な教育費なども書き出して。先ほどの資産総額から借金と支出を差し引きます。

 

残った資産を使って新しい仕事を探すことになりますが、余裕をみて2年かかるとしましょう。

 

となると生活費は2年分確保したいところですが、会社に20年以上勤めた方だと、雇用保険から「失業給付」が最大330日分支給されます。給付額は直近6カ月の平均給与の50~80%で、45~59歳だと最大日額は8千870円です。

 

失業給付330日分でおよそ1年間はまかなえるとして、あと1年分を確保したいところです。ただ、「妻も働き夫婦で協力すれば大丈夫」という判断もあるでしょう。

 

2年間の生活費に困らないなら、私は挑戦していいと思います。そのうえで「新しいことを始めたいか」夫婦でよく相談して。

 

やりたいことがあるなら、定年を待たず、あと20年は働ける50代から始めたほうがいいと思います。それまでにスキルを身につけ、社外に人脈を築くなど準備して。もちろん「辞めない」選択もOK。一度きりの人生ですから、自分の気持ちに素直にストレスの少ないほうを選びましょう。

 

経済ジャーナリスト

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