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《寝室を明るくして眠っている人は、心不全や心筋梗塞のリスクが大幅に高まる―》。そんな衝撃的な研究結果が発表された。

 

10月、オーストラリアのフリンダース大学の研究チームが“夜間の光と心血管疾患の関連性”を長期間にわたり分析した論文が、国際学術誌『JAMA Network Open』に掲載された。研究では、イギリスの8万8千905人の参加者(平均年齢62.4歳)の手首に光を測定するセンサーを取り付け、深夜0時30分~朝6時までに浴びた光の量を1週間測定。その後、浴びた光の強度に応じてグループ分けし、それぞれの健康情報を9.5年間、追跡記録して分析された。

 

その結果、最も明るい環境(照明やテレビの光など)の寝室で眠っていたグループは、最も暗い環境で眠っていたグループと比べ、心不全の発症リスクが56%、心筋梗塞は47%、冠動脈疾患、心房細動は32%、脳卒中は28%高いことがわかったのだ。

 

「ここまで大規模かつ長期間のデータに基づいて、夜間の光曝露と心血管疾患の関連性を示したという点では、非常に画期的な研究結果だといえると思います」

 

そう語るのは、日本睡眠学会総合専門医で、睡眠医療に詳しい阪野クリニックの阪野勝久院長。これまでも、夜間の光は交感神経を活性化させ、睡眠の質を低下させるといれてきた。血圧や心拍数を上昇させることから、炎症や血液が凝固しやすくなるという指摘もある。人間は“概日リズム”(約24時間周期で血圧や心拍数、ホルモンの分泌などを調整する働き。一般的には“体内時計”ともいわれる)が乱れると、高血圧や糖尿病といった生活習慣病を引き起こす可能性があります」(阪野院長、以下同)

 

しかし、突然死の原因ともなりうる心筋梗塞のリスクが約5割も高まるとは驚きだが……。

 

「光と睡眠は表裏一体の関係にあり、夜間の光は本来暗い環境で眠るべき人間の体にはよくありません。夜間に光を浴びることで、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が抑制され、長期的には動脈硬化の進行に関与し、心臓に負担をかける可能性があるのです」

 

さらに同研究では、夜間の光による心臓への影響は女性のほうが男性より顕著であったという分析結果も公表されている。

 

「これは閉経前後のホルモン分泌量の違い、光に対る男女の感受性の性差、生活パターンの違いなどが関連していると考えられます」

 

いずれにせよ、「夜は暗く、昼は明るく」という生活リズムが心臓の健康にとってはいいようだ。では、心血管疾患のリスクを減らすためにやるべき睡眠環境は?

 

「スマホやタブレットなどの画面から出るブルーライトは、概日リズムを崩すため、長時間の使用は避けるべき。とくに寝る2~3時間前からは光を浴びないほうがいいでしょう。また寝室には遮光カーテンを。照明も、白色光よりも暖色系(電球色)の間接照明を使用することを推奨します」

 

部屋を暗くできない場合は、睡眠時のアイマスク使用も対策の1つ。思わぬリスクを招かぬよう、夜間の光の浴びすぎにはご注意を。

 

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