朝いちばんに生え際の白髪を発見して、どんより気分が沈む。そんな経験が、読者世代ならだれでもあるのではないだろうか。
「白髪がどんどん増えて、頻繁に染めないと……。お金もかかるし、ほんとに面倒」「最近、ヘアカラーがしみるようになって、次はかぶれないかと心配」「何度も美容院で染めると高くつくし、自宅ではうまく染まらない」など、白髪やそのケアに関するお悩みは尽きない。
ヘアカラーブランドのウエラが’17年に行った調査では「白髪を見つけたとき、何歳老けた気分になるか」という問いに、女性は平均「6.9歳」! また、「同世代の白髪の有無をチェックする」女性は、72.4%にのぼる。自分の白髪はもちろん、他人の白髪も気になる。白髪は、読者世代女性の“天敵”なのだ。
そこで、「髪も頭皮も、自分の体。その状態をきちんと知って、ケアしてほしい」と話す美容ジャーナリストの伊熊奈美さんに、白髪ケアについて教えてもらった。
■「おしゃれ染め」と「白髪染め」って何が違うの?
ドラッグストアのヘアカラーコーナーには、おしゃれ染めと白髪染めが並んでいる。おおよそ、おしゃれ染めは白髪の少ない若い人向けで、白髪染めは白髪の多い人向けだろうと使い分けているが、中身は違うのだろうか?
「どちらもアルカリカラーで、基本的には同じ仕組みです。違いは、パラフェニレンジアミン(以下、ジアミン)と呼ばれる染料の量。白髪を暗く染めるためには、ジアミンがたくさん必要ですが、おしゃれ染めはジアミンが少なめです」(伊熊さん・以下同)
だとすると、おしゃれ染めのほうが、髪や頭皮にやさしいのだろうか。
「ジアミンの配合比較だけで考えれば、おしゃれ染めのほうがやさしいともいえます。ただ、ジアミンアレルギーになってしまったら、たとえ少量でも拒絶反応が起きるので、おしゃれ染めも使えません」
ジアミンアレルギーの人は、ジアミンを含まないヘアカラートリートメントやヘアマニキュアなどのほか、「オハグロ式白髪染め」も使える。これの特徴はかなり濃い黒にしか染まらないこと。販売元も少なくマイナーな存在だが、ジアミンアレルギーの人にとっては貴重な染毛剤だ。
■ヘアカラートリートメントはいまいち色が入りにくい印象が
「美容院で毎回染めると高くつく」「染めても染めても白髪が出てくるけど、美容院に頻繁に行く時間がない」など、費用や時間のやりくりを考えて、自宅で白髪ケアをしたいという人は多い。
「お財布にやさしい自宅ケアなら、髪や頭皮にもやさしく、肌についても洗えばすぐに落ちるヘアカラートリートメントがおすすめです」
とはいえ、ヘアカラートリートメントは色が入りにくい印象も。
「ヘアカラートリートメントは、髪の表面に吸着するものなので、黒髪には発色しません。白髪だとトリートメントの色がきれいに出るので、実は白髪が多い人ほど、色がしっかりのるんですよ」
ヘアカラートリートメントは、シャンプー後に髪がぬれた状態で使うものだが、よく染めるためには乾いた髪に使えるものを選ぶとよいという。
「ヘアカラートリートメントは、ヘアカラー用のハケにたっぷり取り、染めるときと同じように乾いた髪の根元から塗り重ねましょう。手でヘアカラートリートメントをなでつけるだけでは、内側まで染まりません。そして、すべて塗り終わったら、髪の下側から指を入れ、全体に行き渡るようにしっかりもみ込んでください」
染毛料は熱を加えるとよく染まるので、塗り終えたらラップで頭部全体を包み込むこと。冬は寒いので、生え際や分け目に使い切りカイロを貼って温めると、より染まりやすい。その後湯船でゆっくり温まって、30〜40分待ってから、しっかり洗い流そう。
「ぬれた髪にヘアカラートリートメントを使うときは、タオルドライをして事前に水分を拭き取っておくようにしましょう。面倒かもしれませんが、そのひと手間で、染まり方がずいぶん違いますよ」
■ヘアカラートリートメントは思った色に染まらないのでは?
「ヘアカラートリートメントは、アルカリカラーと同等には染まりませんし、色持ちしません。もっと深くしっかり染めたい方は、毎日してもOK。名前のとおりトリートメントに色がついたような仕組みですから、キューティクルにダメージを与えません。また、ヘアカラートリートメントを選ぶときは、自分の髪色より一段明るい色を選ぶとよいでしょう。そのほうが透け感が出て、おしゃれな雰囲気になります」
とはいえ、ヘアカラートリートメントでは微妙な髪色の調節はむずかしいのでは?
「ヘアカラートリートメントは、1回ではそれほど深く染まりませんし、3日もすれば色が落ちてしまいますが逆にそれがメリット。思いどおりの仕上がりを目指して、さまざまな色に挑戦してください。どんなに派手な色のヘアカラートリートメントでも、1回で強く発色することはないので、安心して。最近はカラーバリエーションの豊富なヘアカラートリートメントもあるので、ニュアンスカラーを取り入れると、髪色の印象が変わりますよ」
たとえば自宅ケア派は、ダーク系をベースカラーとして3日間染めたら、4日目だけはグレイやグリーン、ピンクなどのお好みのニュアンスカラーを入れてみては。おしゃれで若々しい髪色が演出できる。
「最近は、これまでのメカニズムと全く違う、メラニン様の成分で染める染料も販売されています。これもジアミンを使いませんのでアレルギーがあっても使えるものです。ニュアンスカラーとして、メラニン染めのグレイを使うと、ほどよいアッシュヘアになりますよ」
いろいろ試しながら、思いどおりの髪色に近づけていく。ダメージの少ないヘアカラートリートメントならではだ。
「女性自身」2021年2月16日号 掲載