イチゴが減少、ホールケーキの売上低下…少子高齢化、物価高騰がクリスマスケーキにもたらした「過酷な現実」
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■街のケーキ店からはイチゴが消えかけている

 

クリスマスケーキの定番といえば、たっぷりの生クリームとイチゴがのったホールケーキ。しかし「街のケーキ屋さん」ではこんな声も上がっている。

 

「いろんなお店のクリスマスケーキを見ていると、どこのお店もケーキにのせる苺の量が確実に減っているなと感じます。イチゴをスライスをするなど、少ない量でも華やかに見えるような工夫が伺えます。今までと変わらない価格で、昔のようにイチゴがたくさんのったホールケーキを作るのはかなり厳しいんじゃないでしょうか」

 

東京都稲城市で20年前からケーキ店を営むTさんはこのように語る。

 

確かに、色々なお店のクリスマスケーキのパンフレットやホームページを見ると、イチゴがびっしりのったホールケーキをほとんど見かけない。店主の言うように、イチゴをスライスしてのせたり、イチゴ以外の飾りを増やしたり、イチゴをゼリーやジャムに加工したりして工夫をしている。デパートや高級店のホールケーキにはイチゴがふんだんに使われたものもあるが、価格は1万円近い。

 

「毎年、クリスマスシーズンはイチゴの価格が上がります。今は1粒100円とか、そういう世界です。クリスマスケーキにのせるイチゴは、当然形のきれいなものがよいので、形が悪くてもいいから安いものを仕入れるというわけにはいきません。イチゴがたっぷりのったホールケーキを作るとなると、かなりの価格になります。

 

また、イチゴ以外にも小麦や卵、牛乳などのケーキの材料費がここ数年、信じられないくらい高騰しています。そのためどこのお店も、大きなホールケーキを出すのが厳しいというのが現状だと思います。食卓に乗せてみんなで囲めるギリギリのサイズの4号(直径12センチ)でも、4,000円~5,000円はするのではないでしょうか」(Tさん、以下同)

 

大手の洋菓子店や高級店であれば、価格を上げてでも苺たっぷりのホールケーキを売ることができる。高くてもいいから、特別なものが食べたいという消費者も一定数いるからだ。

 

しかし、“地元のケーキ店”の場合、買いに来るのは毎年そのお店のケーキを楽しみにしている地元のお客さんだ。突然価格を上げるわけにもいかない。そのため、生クリームの質を落としたり、果物を缶詰に変えているところも多いようだ。

 

「私としては、値段も含めてお客さんに喜んでもらえる味を死守しなければという思いです。うちのお店では、イチゴの値段が高くなる前に購入し、熟しながら保管できる専用の冷蔵庫を購入しました。知恵を絞り投資をしながらなんとかクリスマスケーキを作っています。それでもお客様から『高い』という言葉をもらうこともあります」

 

イチゴのケーキにこだわらず、タルトなど別のケーキをもっと充実させればよいのでは?と思いきや、そんなに簡単な問題ではないようだ。

 

「タルト生地はアーモンドプードルという粉を使うのですが、その原料となるアーモンドがこれまた価格が高騰していて、ショートケーキよりも高くつく場合もあります。タルトだけではなく、イチゴ無しで見た目を華やかにしようとするとショートケーキより時間がかかることも多いです。こうなると、人件費がかさんでしまいますね」

 

ケーキ店にとって厳しい状況が続く中、Tさんによれば、近年地元のケーキ店の閉店が相次いでいるそうだ。

 

「よく『クリスマスは、ケーキ店のかき入れ時』って言いますよね。でも、正直なところ儲けを度外視しているお店の方が多いのではと感じます。材料費の高騰に加えて、人手不足の問題…。決められたリソースの中で、地元の方に満足してもらえるケーキを作るのはなかなか厳しいです。儲けはほぼ出ないけど、毎年買ってくださるお客様のためになんとかクリスマスケーキを売っている、というお店も多いんじゃないでしょうか。もはや『クリスマスケーキを作りたくない』というお店もあると思います。実際に閉店が決まったお店で、クリスマス前にお店を閉めたオーナーさんもいました」

 

街のケーキ屋さんの葛藤が見え隠れするクリスマスケーキ。材料費の高騰はこのまま収まりそうもない。

 

イチゴのホールケーキそのものが贅沢品となり、食卓から消える日も近いかもしれない。

出典元:

WEB女性自身

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