季節の変わり目は体の不調がいろいろ出てくるが、不眠もその一つ。厚生労働省研究班の調査によると、睡眠薬の服用率がもっとも多いのは65歳以上の女性で、6人に1人が服用していた。1日の服用量では40〜45歳の男性が最も多く、次いで、45〜50歳の女性という結果になったそう。順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生は言う。
「不眠症とは、眠りたいのに眠れない状態が続き、倦怠感や集中力の欠如など心身の機能が低下することを指しています。血流に及ぼす悪影響も大きく、動脈硬化など生活習慣病の発生リスクも上昇。そもそも私たちが夜眠るのは、体を休めて日中の活動で傷ついた細胞や機能を修復するため。成長ホルモンが分泌されるのも、夜間の睡眠中です」
また、睡眠中は副交感神経が優位になり、リラックスすることで血圧も低くなる。不眠が続くと血圧が下がらないため、慢性的な高血圧になりやすいという。
「睡眠薬は低下した心身の機能を取り戻すための踏み台として、短期間服用するぶんには頼もしい味方ですが、長期間服用すると『薬なしでは眠れない』状態になることも」
そこで、ベッドに入っても眠れないとき、全身の細胞(セル)に血液を届ける「セルエクササイズ」を、小林先生に教えてもらった。
まずはあおむけで、ゆっくりと息を吸いながら「前へならえ」をするように腕を高く突き上げる。単に腕を伸ばすだけでなく、肩甲骨を左右に開くように行うことがポイント。
次に、腕の力を一気に抜き、フッと息を吐きながら、両腕を重力にまかせてストンと胸に下ろす。肘が床に当たらないように注意して、これを5回繰り返す。
「緊張状態から一気に脱力させる動きで、ふだんなかなか動かさない肩甲骨回りの筋群のコリを緩和し、血流とともに副交感神経の働きがアップします。よく眠れることで、高血圧も改善されるでしょう」
これから涼しくなると、体は体温を逃さないように交感神経を優位にさせ、血管は収縮する。反対に副交感神経の働きが弱くなるので、より一層、快適な睡眠を心がけたい。