「中年以降は、血圧を意識した食生活を送らないと、加齢とともに血圧が高くなる傾向があります」
管理栄養士で女子栄養大学名誉教授の三浦理代先生はそう警鐘を鳴らす。特に女性の場合は、ホルモンバランスが崩れる更年期以降に高血圧になる傾向が著しい。加えて、昨年から続くコロナ禍におけるストレスや運動不足が加わり、私たちの気づかないところで高血圧のリスクは高まっているというから厄介だ。
「血圧が上昇すると、脳卒中や心筋梗塞などのほか、糖尿病や動脈硬化などさまざまな疾患のリスク要因となるため、気をつけてほしいところです。高血圧はそのような危険があるいっぽうで症状がわかりづらいことから別名“サイレントキラー”とも呼ばれ、気にしない人が多いのが問題です。症状が出た段階ではすでに遅いのです。血圧はある程度、食事でコントロールすることが可能です。ふだんの食事習慣から高血圧のリスクを抑えることは大切です。血圧をコントロールするために特におすすめしたい栄養素がいくつかありますが、その栄養素をもつ食材を組み合わせて食べると、さらに効率よく血圧をコントロールすることが可能となります」(三浦先生・以下同)
その栄養素には、カルシウム、カリウム、マグネシウム、食物繊維などがある。
「カルシウムは骨をつくる材料として知られていますが、不足すると血管収縮を招き、高血圧を加速させます。特に更年期以降の女性はカルシウム不足から骨粗しょう症になる人が増えるので、意識して積極的に取りたい栄養素のひとつです」
カルシウムを含む食品との組み合わせとして相性がいいのが、春菊とごま、ヨーグルトときな粉など。マグネシウムやカリウムと組み合わせると、血管の収縮を調整してくれる。
カリウムには体内のナトリウム(塩分)排出を促す働きがあり、血圧コントロールのためにも取りたい栄養素だ。
50代以上の女性の1日の目標摂取量は2,600ミリグラム以上。代表的な食品はアボカドで、1本あたり720ミリグラムのカリウムが含まれている。そのほか、バナナ、小松菜、柿などにもカリウムが豊富に含まれている。
食べ合わせでおすすめなのが、バナナと牛乳、キウイとレタスなど。カリウムに食物繊維やカルシウムが加わることで、体内のナトリウム排出が促進される。
マグネシウムは、カルシウムの働きを調整し、血管の収縮を抑え、拡大を促す働きがある。マグネシウムを多く含む食品はほうれん草、海藻類、ナッツ、ごまのほか、納豆などの大豆製品がある。ナッツと豆腐を一緒に食べると、マグネシウムと同時にカルシウムも取ることができ、血管の収縮を調整する働きが得られる。
食物繊維には、体内の余分なナトリウムの排出を促す働きがあるほか、整腸作用もあり、便秘の解消に働き、過剰な脂質も排出してくれる。
「野菜は全般的に食物繊維が豊富ですが、なかでもモロヘイヤは優秀です。同じヌルヌル・ネバネバ食材の海藻類と組み合わせて食べると、ナトリウムや脂質を排出する作用がアップします」
相性のよい組み合わせに、めかぶとレモンがある。食物繊維とクエン酸がナトリウムの排出を促してくれるという。
そのほか、玉ねぎ、大根、かぼちゃ、にんじんなどの野菜も血圧コントロールのためには積極的に取り入れたい。特に“血液サラサラ”効果が得られる代表格である玉ねぎ、βカロテンの豊富なかぼちゃ、にんじん、ビタミン豊富な大根やレタスなどを積極的に取ろう。
野菜同様、フルーツの降圧効果も見逃せないと三浦先生は話す。おすすめは柿やキウイ、バナナ、レモン、いちご、りんご、アボカドなど。
「フルーツにはビタミン、水溶性食物繊維のほか、抗酸化作用のあるポリフェノールも豊富に含まれていて、血流を促したり、血管も丈夫にしてくれます。余分な脂質を排出する働きもあります」
これまで見てきたカルシウム、カリウム、マグネシウム、食物繊維のすべてを含む、いわばスーパーフードの大豆食品も食べ合わせで活用したい。
ほかに、血管をしなやかにするEPAやDHAを含む魚、血圧を安定させる働きがあるタウリンを含むイカやタコ、血管を丈夫にして血圧を下げる働きのあるルチンを含むそばも見逃せない。1日の食事の中で上手に取り入れて、食材の栄養を効率よく吸収しよう。