日本人の10人に1人が悩むという、おなかのトラブル。病院に行かずに放置しがちな下痢や便秘だが、病院に行っても“原因不明”と言われてしまうことが多いという。では、おなかの不調はなぜ起こるのだろうか? 腸の名医に聞いたーー。
「なかなか治らない、便秘や下痢などおなかの“不腸”。それだけでもつらいのに、長引く不腸はさまざまな病気の引き金になってしまいます」
そう語るのは『3週間でお腹が整うまいにち腸日記』(池田書店)の著者で、消化器専門医の江田証先生。先生いわく、不腸の原因には「ストレス」「食事」「生活習慣」の要素が関わってくるという。今回は、「ストレス」について教えてもらった。
■ストレスが腸壁を破壊する!?
「腸のポリープや炎症など目に見える原因が見つからないおなかの不調には、脳が感じるストレスが関係している場合があります。腸のぜん動運動を制御するのは自律神経です。自律神経のうち、交感神経が働くと腸の動きは抑えられ、副交感神経が優位になると活発に。つまり交感神経が過剰に働くと便秘に、副交感神経が過剰に働けば下痢になるのです。実は、脳と腸は、この自律神経という神経を通じて情報交換するパートナー関係。そのため、脳がストレスを感じて自律神経の働きが乱れると、おなかの不調が引き起こされるのです」
さらに、ストレスによって、腸内がボロボロになることもあるという。
「ストレスを感じると、脳からは『CRH』というホルモンが放出されます。このCRHが腸に到達すると『ヒスタミン』という物質が放出され、腸の粘膜が荒れてしまうのです。通常はすぐに回復しますが、ストレスが強すぎたり長期にわたったりすると腸の不調が常態化。腸の粘膜に穴があいて、そこから毒素やウイルスなどが血管に漏れ出すこともあるのです。これらは、免疫力の低下や、アレルギーなど、全身の不調につながります」
腸内環境が悪化した状態を放置すると、腸の健康が損なわれるだけでなく、がんや動脈硬化、認知症などの病気になるリスクも上昇する。
「すなわち、おなかの調子を整えることは、おなかだけでなく全身の健康にもつながるのです」