加齢に伴い、背骨の内側にある脊柱管が狭くなっていくことで、中に通っている脊髄や神経が圧迫されるなどして起こる脊柱管狭窄症。高齢化が進むにつれて増えている疾患だが、痛みやしびれ、歩行障害、排尿障害といった症状を引き起こすため、QOL(生活の質)が下がるなどの悩みを抱える人も多い。
「脊柱管狭窄症で具体的な痛みやしびれを感じる場所は人によって異なりますが、だいたい腰から下の下半身です。痛みがあることで、日常生活に支障をきたすことはもちろんのこと、精神面に影響する場合もあります」
こう話すのは鍼灸師の立花愛子さんだ。
脊柱管狭窄症の初期の症状では、腰から脚の裏側やふくらはぎに痛みが出るが、進行すると、太ももの外側やすねのあたりにも痛みが生じるようになることが多い。
鍼治療ではこうした痛みやしびれを緩和させることができるのだそう。
「鍼治療に使う鍼にはいろいろな種類があるのですが、鍼を束状にした散鍼と呼ばれる皮膚の表面に軽く当てるタイプの鍼は、皮膚の表面に軽くトントンと当てるだけで血流が促進され、コリが和らぐという施術です。この散鍼をヒントに考案した、家庭でも使える『つまようじ鍼』を紹介しましょう」(立花さん・以下同)
【つまようじ鍼の作り方】
つまようじ鍼の作り方はいたって簡単。20本ほどのつまようじを丸く集めて輪ゴムで束ねるだけ。高さをそろえれば20本のつまようじの先がそろい、表皮に当たる“面”ができあがる。この面で皮膚の表面を軽くトントンと当てるだけ。痛みはほとんどない。
【つまようじ鍼の持ち方】
つまようじ鍼の先に近いほうを親指と中指でつかみ、人さし指を後ろ端部分に添える。
「私たちは誰しも年を重ねるにつれて関節が変形していきます。それによって神経が圧迫されると痛みが生じるのですが、痛みによって筋肉も緊張し、ハリやコリが生じます。コリは血流を滞らせるので、より痛みが増すことになります。」
痛みがあるとそこをかばって姿勢にゆがみが生じたり、痛みゆえに行動が制限されることも珍しくない。痛みに対する恐れから運動不足に陥ったり、ひどい場合はうつの症状が出ることもある。
「ですから、施術では、まず痛みを取り除くことを意識的に行います。散鍼を使ったこの方法は痛みを取り除くうえで即効性も期待できますから、私たちもよく施術で使う手法なのです」