まだ暑い日が続いているものの、少しずつ秋の味覚に関するニュースを耳にするようになってきた。スーパーの店頭でサンマを見て、季節の移り変わりを感じる人も多いだろう。
「サンマは栄養価がとても優れた食品です。良質なタンパク質のほか、EPAやDHAといったオメガ3脂肪酸が豊富。オメガ3脂肪酸といえば、血流をよくして血栓ができるのを防ぐ働きや高血圧の予防効果などが知られています。過去のハーバード大学の研究でも、『週に2~3回魚を食べる人は、そうでない人に比べて長生き』という結果が出ています」
こう話すのは、栄養学博士の白鳥早奈英先生だ。脂の乗りがいいサンマは健康効果の面でもおいしいところだらけ。さらに、一回の食事でサンマと一緒に食べるとその効果が2倍にも3倍にもなる食材があると白鳥先生は話す。
「相性のよい食材は、同時に取ることで栄養面での相乗効果が得られます。このことを意識して積み重ねることが、健康寿命を延ばすことにもつながっていくでしょう」
今回は白鳥先生にサンマと組み合わせるのがおすすめの食材を挙げてもらった。付け合わせにしたり、汁物の具に入れるなどして組み合わせよう。
白鳥先生がサンマとの組み合わせを特に推奨するのがモロヘイヤ。
「モロヘイヤには、βカロテン、ビタミンC、カルシウムなどが豊富です。特にβカロテンの量はほうれん草や春菊の2倍ほど。サンマと一緒に取ると、オメガ3脂肪酸の吸収率が高まり、脳の働きを活性化し、血糖値やコレステロール値の上昇も防ぎますから、生活習慣病の予防にもよい組み合わせです」(白鳥先生、以下同)
山芋と合わせると、食欲の秋に助かる効果が得られるという。
「山芋にはでんぷん分解酵素のアミラーゼやジアスターゼ、さらに食物繊維、腸内環境を整えるレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)が含まれており、便秘改善やダイエット効果が期待できます。サンマと組み合わせることで女性ホルモンの産生量を増やすというメリットも」
ほかに、ごまの栄養素との相性もバッチリだ。
「そのままよりもすりごまにしたほうが食物繊維の吸収量がアップ。ベストなのはペースト状にして食べること。サンマと一緒に取ると、抗酸化作用がさらに高まります」
サンマの調理法はいろいろあるが、多くの人がまず思い浮かべるのが焼きサンマだろう。
「日本人に最もなじみ深い食べ方ですが、これを応用した私のおすすめは『サンマのお茶漬け』です。焼いたサンマの身をとり、冷やごはんの上にのせ、三つ葉やごまを散らしてから熱い緑茶をかけます」
三つ葉と一緒に食べることで、香りの相乗効果で食欲をそそるうえ、食物繊維や良質なタンパク質が取れる。
「食材の栄養効果のほか、緑茶のカテキンによって、頭がさえる作用が得られます。また、ごはんは炊きたてよりも一度冷まして食べるとレジスタントスターチが約1.6倍に。腸内環境を整える作用が増強されます」
これら相性がいい食材があるいっぽう、できれば避けたい組み合わせもある。漬け物がその一例だ。
「サンマを焼いたときに発生するジメチルアミンは、漬け物に含まれる亜硝酸塩と合わさると発がん性物質を作り出してしまう可能性があると指摘されています」
調理の際の注意点も。
「サラダ油は酸化しやすい性質があり、揚げたり焼いたりすると、料理自体が酸化しやすくなります。サンマを炒めたりフライにする場合は、酸化しにくいオリーブオイルがおすすめです」
これから食卓に並ぶ機会が増えてくるサンマ。食べ合わせにも気を配って、秋の味覚の健康効果を余すところなくいただいちゃおう。