新型コロナ第10波のピークが過ぎたと思ったら、厚生労働省は治療薬や入院医療費の自己負担分に係る公費支援を、3月末で終了すると発表した。昨年10月から、ゾコーバやパキロビッドパックなどの治療薬は、1回あたりの治療で9千円の定額負担(3割負担の人の場合)となっているが、これが医療現場で問題になっているという。
「発熱外来で検査を受けて陽性になったとしても、薬代が9千円かかると患者さんに伝えると、『払えないからいりません』と言って断られるケースがほとんどなのです。その場合は解熱剤と咳止めを処方しますが、症状をかえって長引かせるなどの支障をきたしています。自己負担額が増えたら受診控えする人がもっと多くなるでしょう」
公平病院(埼玉県戸田市)の公平誠院長はそう懸念する。
4月からは、治療薬は定額負担から補助なしの自己負担になる。
3割負担で5日間処方されたケースでは、ゾコーバ約1万5千500円、ラゲブリオ約2万8千200円、パキロビッドパック約2万9千700円になる計算だ。
■入院費は補助を受けて7万5千円になっていたが
「結局、高熱が出ても受診するのを我慢して市販薬でしのいでしまうといったケースが出てくることを心配しています。医療機関にかかるのは症状が重くなってからで、重症化してから入院したとしても、よくなるまで時間がかかってしまうようでは本末転倒です」(公平院長、以下同)
前出の3つの治療薬は入院した患者にも症状によって使用する場合があるという。仮にパキロビッドパックを使用したら、約3万円。
入院の場合を見てみよう。重症者が入院した場合は総医療費は約310万円かかるとされている。高額療養費制度の自己負担限度額は、年収約370万〜約770万円の人は8万円+医療費比例額(1カ月)。この3月まで入院したときには、本来の高額療養費の自己負担額約10万8千円が、補助を受けて、入院費は約7万5千万円になっていた。4月からは補助がなくなるので、約10万8千円に戻る。
コロナにかかっても、入院しなかった場合は薬代約3万円がかかるが、入院した場合は、10万円を超えることになる。
「報道では『公費負担は全面撤廃』と言われていますが、まだ公費負担になっている薬があります。気になるのは、重症の患者さんが入院したときに使う『レムデシビル』が、自己負担になったら入院費は一気に増えてしまうことです」(高額療養費制度の対象になるが)
新型コロナはまだ終息宣言が出ていないので、今後も感染拡大の恐れがある。今までどおりの手洗い、うがい、マスク着用など感染しない生活を継続する必要がある。